原作者の夢枕獏さんと佐藤嗣麻子監督との長年の親交から生まれた映画『陰陽師0』。第96回米アカデミー賞で視覚効果賞を受賞した『ゴジラ-1.0』のVFXクリエイターが参加し、幻想的で迫力あるエンターテインメント作品に仕上がっている。本格的呪術表現にもこだわったという佐藤監督と、呪術監修を務めた作家の加門七海さんが語り合った。

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「日本最高峰の呪術オタク」が監修

佐藤嗣麻子監督(以下、佐藤) 今回、『陰陽師0』を撮ることが決まったとき、まず考えたのが、どなたに呪術監修をお願いしようかということでした。

 史実や所作に関しては、その道のプロにお願いをしたので、本当は呪術も専門の呪術師にお願いしたかったんです。でも、現代において呪術師を生業にしているプロはいないので、私が知りうる日本最高峰の呪術オタクである加門さんにお願いするしかないと思って、加門さんにお声がけしました。

加門七海さん(以下、加門) 私は自分でも『晴明。』という小説を書いているので、最初にお話を伺った時は正直、「えっ」と思いました。でも、私が好きな國村隼さんが出演されるとお聞きして、思わず「やります」とお答えしたんですよね(笑)。

佐藤 最初、ドン引きされてましたもんね(笑)。でも今作は、私がプロの監督になる前からの(原作者である夢枕)獏さんとの約束を、ようやく実現できた思い入れの深い映画です。今作では獏さんの原作にはまだ登場しない、安倍晴明の学生(がくしょう)時代を描いたのですが、私が撮るんだったら絶対呪術をきちんと描きたいという強い思いがあったので、どうしても加門さんにお願いしたかったんです。

 獏さんからは映画が完成した後で「いつか(私に)撮ってもらわないといけないというプレッシャーがずっとあった」ともお聞きしました。

加門 獏さんの原作を映画化するプレッシャーではなく、佐藤監督から獏さんへのプレッシャーもあったのですね…! 佐藤監督とは結構長いお付き合いですが、お仕事をご一緒するのは今回が初めてでしたよね。普段、友達として飲んでいるときとは違うオーラで、仕事に対する真剣さや気迫を感じました。

2024.04.25(木)
文=相澤洋美