加門 本当に素晴らしい作品だと驚嘆しました。呪術にここまで正面から向き合った映画は、おそらく日本でははじめてだと思います。

 たとえば普段、神社でご祈祷してもらっても、実際に神様の姿が見えるわけではありませんが、それを佐藤監督は見事に可視化して、しかも、このうえなく美しい映像で表現してくださった。これは、もう大喝采です。

佐藤 ああ、よかった…。自分では自信満々でしたが、「あそこは駄目だった」「いまいちだった」などと言われたらどうしようと、実は戦々恐々としてたんですよ。ホッとしました(笑)。

 でも、物語の核となる龍を登場させるシーンはすごく難しかったんです。西洋では龍はトカゲとか蛇のような実態として現れますが、東洋では龍は、エネルギーの象徴です。今回はVFXを使って、嫉妬や様々な欲、殺意の象徴としての「火龍」と清めとしての「水龍」を表現してみましたが、これまでに映像化されたことがないので、何もないところから想像して描いていくのが大変でした。

 米アカデミー賞で視覚効果賞をとった『ゴジラ-1.0』を撮った白組のVFXクリエイターにも参加してもらえたことで、クオリティーを上げられたのはよかったと思います。

 

アカデミー賞1カ月前に山崎貴監督と3人で

加門 白組といえば、アカデミー賞の発表1カ月前くらいに、佐藤監督と山崎貴監督(佐藤監督の夫で『ゴジラ-1.0』監督)と私の3人で一緒にご飯を食べたとき、佐藤監督が「『ゴジラ-1.0』がオスカーをとる」とおっしゃっていましたよね。私はそのときすでに受賞が決まっているんだと思ってました。授賞式は内定者を発表する儀式だと思っていたんですが、そうではなかったことが後からわかり、驚きました。あれは、なんでわかったんですか?

佐藤 なんでだろう…。なぜか、とるだろうなということがわかったんですよね。不思議です(笑)。でも、それだけ高いポテンシャルを持っているトップクリエイターたちの参加なしでは今回の呪術シーンは表現できなかったので、いまこの作品が撮れたのは必然だったのかなと思います。

2024.04.25(木)
文=相澤洋美