佐藤 加門さんはプライベートでお会いするときと同じ印象で、まさに日本呪術オタクの頂点とも呼べる存在のままでした(笑)。新しい晴明像を生み出すためにも、加門さんにお受けいただけて本当によかったです。
加門 呪術表現はもちろんですが、キャストにもかなりこだわったんですよね。安倍晴明を演じた山崎(賢人、崎たつさき)さんと源博雅を演じた染谷(将太)さんのバディも素晴らしかったです。
佐藤 原作の魅力は何と言っても安倍晴明と源博雅ふたりの関係性なので、今作ではふたりが出会って関係性を構築していく姿と、人間の本質を大事に描きました。原作にないものもたくさん描いていますけど、原作ではやらないということは絶対にやらないよう気をつけたつもりです。
「万が一」が起こらないよう、あえてフェイクを加えた呪術
加門 今作では、佐藤監督が描きたい呪術世界を補佐するために作中ではさまざまな印や呪文、御札を登場させましたが、長年呪術を研究している立場から、万一のことが起こらないことをいちばん意識しました。
本物の呪術を映像化するのって、実はすごくリスクが高いんですよ。古文書や現在も使われている中国道教の呪文や印などを参考に、あえてフェイクを加えながら、オリジナルで考案したものを採用しています。
佐藤 獏さんの原作は、どちらかというと幽霊や妖怪を退治する話で、映像化されると、真言密教系の術を使っているのが多いんです。あれは、真言密教のお坊さんがやるならいいけど、陰陽師でやるとお坊さんと見分けがつかないので、加門さんにはそこも意識して欲しいとお願いしました。
加門 既存の陰陽師ものは、大体密教系か神道系の術を使っていましたよね。だから、そことはまた違うところで、道教を取り入れたり、実際に陰陽道の文献に残っているものをアレンジしたりして変化をつけました。
難しかった龍を登場させるシーン
佐藤 映画全体のできばえに関しては、どうでした?
2024.04.25(木)
文=相澤洋美