世界で活躍する25歳のピアニスト、藤田真央さん。実は将棋好きな藤田さんが、かねて会いたいと思っていた棋士が、“ひふみん”こと加藤一二三さんでした。「自分は負けず嫌いではない」とともに語る2人が見てきた、第一線の世界とは。『週刊文春WOMAN2024創刊5周年記念号』から一部編集、抜粋の上紹介します。

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藤田 ずっと加藤先生にお会いしたかったんです。先日も秋の園遊会でのご様子を拝見しました。

加藤 はい、あの、藤井聡太さんと猫の話題を準備していったんです。愛子さまは猫を2匹飼っているとうかがったものですから。

藤田 私も実家で猫を3匹飼っているんですよ。

加藤 猫は自分の名前を憶えていて、5歳児程度の知能があるんだそうです。藤井聡太さんはいま話題の方ですから、話のお題にいたしました。皇族方ともお話ししましてね。三笠宮瑤子殿下は、お父様の三笠宮寬仁さまから生前、玉を囲う「穴熊」の戦法を教わったそうですよ。

藤田 それは渋いですね。

ピアニストとしての節目にはモーツァルトがあった

加藤 私は2023年に入って、なぜかたまたまモーツァルトの『ピアノ協奏曲第24番』を聴くようになりまして。

藤田 そうなんですか! 24番は私も思い入れのある曲です。これまでのピアニストとしての節目にはモーツァルトがあって、クララ・ハスキル国際ピアノコンクールのファイナルでの演奏曲が、まさに『ピアノ協奏曲第24番 ハ短調 K.491』でした。

加藤 私はタイトル戦の合間に、『戴冠ミサ曲』や『レクイエム』をよく聴いていました。娘の百合がミッションスクールに通っていて、『戴冠ミサ曲』の合唱を聴く機会がありましたし、曲の背景を調べる宿題に一緒に取り組んだこともありました。

 藤田さんのご著書『指先から旅をする』にもモーツァルトとのゆかりが書いてありましたね。冒頭に演奏した国を示す世界地図が載っていて、本当に世界中を旅しているのがよくわかるのですが、イスラエルでの公演の話はとても興味深く拝読しました。私は洗礼を受けたカトリックの信仰者でもありますので。

2024.01.20(土)
text=Kosuke Kawakami
photographs=Tomosuke Imai
撮影協力=ヤマハミュージックジャパン