この記事の連載

 伝統的な二胡という楽器で、独自の演奏スタイルを確立し、新しい可能性を切り開いてきたウェイウェイ・ウーさん。伝統と革新のバランス、故・坂本龍一さんとの思い出などについて、お聞きしました。(全2回の後篇。前篇を読む


――2019年に開設されたYouTubeチャンネルでは、アルバム「贈りたい人へ」に収録されている「木蘭の涙」が26万回、服部良一さんの「蘇州夜曲」のピアノとのライブバージョンが30万回も再生されるなど人気です。動画配信を積極的にされるのは、コロナ禍の影響もあるのでしょうか。

 そうです。あのときは世界中が不安な気持ちになっていたので、何か少しでも自分にできることがあればやってみようという気持ちでした。

 2020年に緊急事態宣言が出された時に、「今こそ二胡で人々の心を癒やすべきだ」と、16枚目のアルバム「贈りたい人へ」を発売しました。その時にYouTubeでの生配信も含め、インターネット上で誰もが私の演奏を聴けるようにしました。

 まったく動画収録も配信もしたことがなかったのですが、二胡教室も開催できない状態だったので、「それならリモートでレッスンをしよう」と、事務所スタッフの皆さんと手探りで動画を撮影してアップしたんです。

 私たちが思っていた以上にたくさんの方に見ていただけて、「癒やされた」「救われた」と嬉しいご感想もたくさんいただきました。あのとき、思い切って始めて、本当によかったと思っています。

――レッスン動画以外にも、ライブステージの生配信や、名曲演奏など、様々なコンテンツをあげておられます。母国・中国でも話題になったのでは。

 中国はYouTubeが規制されているので、WeChat(ウィーチャット)やテンセントビデオ(騰訊視頻)にアップしていたのですが、中国のメディアで働いている友人から「中国には、二胡をこんなふうにかっこよくおしゃれに、そして楽しそうに弾いている大人はいない」と言われました。

 「あの二胡ライブを街中でやったら、もっと盛り上がる。だから、パンデミックが終息したら、ぜひ中国に来て、街中で二胡演奏のパフォーマンスをしてほしい」と熱烈なオファーを受けました。

 文化大革命を経験している大人世代は、「いまさら二胡なんて」という感覚の方も多いんです。習いたいと思う人も少ない。でも、そんな大人世代が、私たちのライブ演奏を見て、二胡に興味を持ってくださったと聞き、とても嬉しかったです。

2023.10.26(木)
文=相澤洋美
撮影=鈴木七絵