素晴らしい発見に満ちたワインのセレクション

現代風に仕上がった、“ヤマウズラの雛の温かいパテ”

アヤ とにかく忘れられない料理は、“ヤマウズラの雛の温かいパテ”だったわ。その組み合わせの軽やかさ、ピュアな味わい、テクスチュアといったら! ヤマウズラの雛の肉、レバー、キャベツの構成で、それはクラシックな組み合わせなのに、パイ生地ではなく、薄手の生地で包んだ、素晴らしくモダンなパテだったわ。

セバスチャン 非常にクラシックなラードで作るパイ生地ではなくて、パリッと仕上げた練り込み生地が全体の軽やかさを表現しているんだ。伝統的な生地に、モダンな技術を投入して、新しい軽やかさを表現することに成功したんだ。昔から引き継がれたリッチな味わいとか、偉大なる大地といったフランスに根づいたガストロノミーの歴史を壊すことなくね。

アヤ ワインも素晴らしかったわね!

セバスチャン ジュランソン・セックのキュヴェ“マリー”2011、ボングラン(ジャン・テヴネ)のキュヴェ“マコン・クレッセ”1997、それにラ・スピネッタのモスカート・ダスティ“ブリッコ・クワリア”2012は素晴らしい発見だった。

アヤ それにムルソー“レ・シュヴァリエール”2011といったら。是非、日本のグルマンの方々にもムーリスの料理を早く体験してもらいたいと思ったわ。

セバスチャン 伝統をベースにした料理にこんなに感動するなんてこと、僕は長らくなかったな。心に訴えかけられたとも言いたいよ。今まで僕と君が一緒に体験した食卓のなかで、ムーリスの今日という日の体験は最高のものの1つだったということ、賛同してくれる?

アヤ もちろんよ!

Restaurant Le Meurice - Alain Ducasse
(レストラン・ル・ムーリス・アラン・デュカス)

所在地 228 rue de Rivoli 75001 Paris
電話番号 +33-1-4458-1055
URL http://www.lemeurice.com/
営業時間 12:30~14:30、19:30~22:00
定休日 土・日曜日

伊藤文 (いとうあや)
パリ在住食ジャーナリスト・翻訳家。立教大学卒業。ル・コルドン・ブルー パリ校で製菓を学んだ後、フランスにて食文化を中心に据えた取材を重ねる。訳書にジョエル・ロブション著『ロブション自伝』、グリモ・ド・ラ・レニエール著『招客必携』、フランソワ・シモン著『パリのお馬鹿な大喰らい』(いずれも中央公論新社)、著書に『パリを自転車で走ろう』(グラフィック社)など。食に関わるさまざまなジャンルの人々を日仏で繋ぐ、バイリンガルのウェブマガジン「食会」主宰。
食会 http://shoku-e.com/

セバスチャン・リパリ
料理コラムニスト、コンサルタント。国際的なガストロノミー会社「Food & Beverage」 のコンサルタントを15年務めた後、「Bureau d'Etude Gastronomique」を設立。アラン・デュカス出版の編集やCanal+料理番組のコンサルタント、多くのイベントのディレクターを務める。名シェフ、ティエリー・マルクスが会長を務めるアソシエーション「Street Food en Mouvement」の創始者で副会長。
Bureau d'Etude Gastronomique http://www.lebureaudetude.com/


 

Column

アヤ&セバスチャン パリ、男と女のフレンチ語り

滞仏20年の料理ジャーナリスト/翻訳家、伊藤文。錚々たるシェフたちからの信頼を得る料理コラムニスト/コンサルタント、セバスチャン・リパリ。花の都の美食に通じたふたりの男女が、いま訪れるべき最高のレストランについて縦横無尽に語り合う。ここに、フランス料理の真髄がある。

2014.02.06(木)