片付けのポイントは、大切なものを見極めること
家が大好きで、片付けもDIYも楽しそうに実践している岡本さん。整理整頓好きは元々の性格なのでしょうか。
「父が几帳面だったので、その性格を受け継いでいるところはあるかもしれません。でも、小さい頃は、片付けなさいとよく注意されていましたね。それが二十歳の頃に自分だけの部屋ができて、そこからインテリアに興味を持つようになって。自分の空間だから快適にしたい、そのためにはどうすれば良いのかなと考えるようになったんです。心地いい空間をキープするために片付けている、という感じです。ちょうど良い収納がないときは、自分で作ったりもしていました」
片付け上手には後天的になれるものだとわかって、希望が見えてきた方も多いかもしれません。とはいえ、素人にとっては何から手を付けて良いのかさえわからないもの。岡本さんに片付けを依頼される方のお悩みには、どんなものが多いのか気になります。
「片付けをご相談くださる方に共通しているのは、ものが溢れていること、もったいなくて捨てられないという気持ちが強いことです。買ったものを使いきれず、どんどんものが増えていってしまうんです」
いつか使えるかも、もったいない、という気持ち、よくわかります。でも、そこは心を鬼にして捨てないといけないのでしょうか。
「もったいないという気持ちは、大切ですよね。ですから、どんどん捨てましょうという提案はしません。でも、本当に必要なものが埋もれて本来使われるべきものが使われないことも、もったいない。そこで、お客様の趣味やライフスタイルなどを、ひたすら伺います。片付けの間中、ずっとお話ししていますね。聞かないことには、どのような考え方をされるのかもわからないので。そうやってずっと話しながら、その方にとって本当に大事なものは何かを見極めていきます。
“なんとなく持っているもの”が部屋を散らかしていくので、“これが好き、これが良い”というものを選んでいく。時間はかかりますが、自分自身に向き合われた方ほど片付けのリバウンドをしにくいんです。私自身も、使えないものや使わないもの、自分に合っていないものをしっかり受け止めて、お別れしています。そうすることで、余計なものを買わなくなるんです」
自宅はもう手を入れるところがほとんどないので、他の人の家を快適にできることが楽しい、お客様の笑顔が増えていくのを見るのが嬉しいと話してくれた岡本さん。自然体でありながら迷いのない姿は、日々片付けを通して自分自身と向き合っている結果なのかもしれません。
日々の暮らしを、ひいては自分の人生をスッキリ快適にしてくれる、「自分に優しい」お片付け。あなたも、ちょっとイラッとした何かを我慢せず、改良してみるところから始めてみませんか。
2024.01.07(日)
文=松山あれい
撮影=平松市聖