頭の固い人を説得できないと、そこで諦めてしまったり、やる気をなくしてしまったりすることもあるじゃないですか。そして、不満がたまって、飲み会で業界の愚痴をしゃべる……みたいな。そういう環境でやっていくよりは、自分でやるという道を選んだほうが私はいいと思っています。

——ただ、独立にはリスクも伴いますよね。「大コケしたらどうしよう」など、転ばぬ先の杖がない状態に不安は感じないですか?

粉川 不安はもちろんあります。だから「コケてもここまでは砂が敷いてあるから大ケガにならないな」という、大丈夫な範囲をしっかり見極めることが大事だと思います。

 会社を立ち上げるにあたって、これまで衰退していってしまった映画配給会社がなぜそうなったのかを調べてみたんですよ。そしたら、みんな「成功したらさらなる山に登りたくなる」ということがわかりました。どんどん大きな山にチャレンジしちゃうんですよね。

 私の会社では、しばらくは『ストールンプリンセス』が最大の山です。小規模作品を中心に取り扱うと、自分の目でいい作品を掘り出さなきゃいけない苦労がありますが、それでも最初は安全な道を選びます。

——男性社会といわれることも多い映画業界ですが、苦労してきたことはありますか?

 

「妊娠したら席がないと思え」という言葉も

粉川 業界関係者が「女性は基本的に採用したくない」とおっしゃっているのを聞いたことがあります。「妊娠したら席がないと思え」といった言葉もありましたね。それは飲み会での発言だったので、「そのくらいの気持ちで働きなさい」という意図を強調しただけだと理解していますが、それでも一女性としては「うっ……」と思う部分がありました。

 そういったこともあって、一生映画業界で雇われの身では生きていけないのかなと思い、独立志向を持ちはじめたのかもしれません。私はすぐ子どもが欲しいわけではないですし、今のところ結婚する予定もないんですが、いずれは子どもや結婚を、という気持ちもあるので、そう考えたときに厳しい業界だなと感じていました。

2023.12.17(日)