『ストールンプリンセス』を製作した「アニマグラッド」の新作もあるので、それも日本で上映したいですしね。いま、ウクライナでは侵攻の影響で国の半分くらいの劇場が閉まっているらしいんですが、そんななか国民の方々に喜んでほしいという思いで2023年3月に上映開始されたそうで、彼らの熱意をまた引き継ぎたいと思っています。

——今後は会社として、どういった活動、事業を行っていく予定でしょうか?

 

「こんなことを言うと劇場の方々からは怒られそうですけど…」

粉川 いろんなことをやっていきたいですね。作品のジャンルにこだわりはないですし、そもそも映画館という場にもこだわりがないんです。以前、「逗子海岸映画祭」に行ったときに、よく知らない昔の映画を観たのが、すごく良くって。海辺でビール片手に映画を見られるというイベントなんですが、そういった体験、作品との新しい出合い方を提供できるのって素晴らしいなと思います。

 今は映画館のチケットが値上がりしてほとんどの劇場で「大人2000円」になりましたが、ネットフリックスをはじめとしたサブスクがどんどん良作を配信するなか、2000円を払って1本の映画を観るって、映画好きの私でもちょっと高いなと思うことがあります。

 だから、映画館以外で、映画を用いて非日常を体験できる場を作りたいんですよね。こんなことを言うと劇場の方々からは怒られそうですけど(笑)。

——粉川さんの取り組みは「大作を作ってシネコンでどかっと大量に上映する」といった映画ビジネスの旧態的な構造からの脱却にもつながりそうですね。

粉川 自分でいろいろとやってみて思ったんですけど、製作者が何年も情熱をこめて作り上げてきたものが、上映してしまえば一瞬で終了し、配信が始まって……と、映画が消費されているような感覚があるんです。

 でも、その一作にかける思いはそれぞれ強くあって、だからその作品を愛してくれている人のために、もう少し特別で新しい体験を、この先ずっと提供しつづけられたらうれしいと思っています。同じことをずっとやっていても意味がないですしね。

2023.12.17(日)