この記事の連載
あらゆる「味」には効能がある
東洋医学では何かを無性に食べたくなるのは“身体の不調のサイン”だと考えます。
私は子供の頃、あまり丈夫でなく、とくに心臓に関して不安を抱く生活を送っていました。大人になってからも心臓の発作に悩まされたことがあり、それがきっかけで薬膳の道に進んだのですが、実は私、疲れると甘いものでなく、苦いものが無性に食べたくなります。たとえばピーマン。ちょっとおかしいですよね。チョコレートが食べたくなるのはみなさんと同じなのですが、甘いスイート系ではなく、甘みの少ない85%カカオくらいのビタータイプが食べたくなります。
また、酸っぱいものが食べたいと感じる時。それは肝臓系の状態がよくない、知らないうちにオーバーワークで疲れている時だったりします。それに、イライラしているとレモンや梅干しなど酸っぱいものを口にしたくなりませんか? 酸味はスッキリする効果、イライラした気持ちを抑える働きがあるので、身体が自然に求めるのでしょうね。
このように「甘い」は疲れを癒して痛みを軽減させ、「苦い」は熱をさげ、「辛い」は熱を発散させるなど味そのものに効能があり、その効能が低下した時に、身体はその味を欲します。甘いもの、辛いものは嗜好性が高いので、とりすぎにはくれぐれもご注意を。さほど疲れてもいないのに毎日、甘いものをやたらと摂取してはいけません。
毎日食べたいと思ってしまう方はまず「そんなに疲れているのか?」「胃の調子は?」「どこか不調なところあるかしら?」と考えてみてください。甘いものを食べることが常習化しているかもしれません。
身体の声にしっかり耳を傾け、きちんと対応することが未病(まだ病気にはなってはいないものの、軽い症状がある段階)を防ぐことにつながります。
おやつは心のご褒美である
小さな子供は食事をさせようとしても、なかなか食べてくれないことがあると思います。うちの子供たちも赤ちゃんだった頃、とても食が細く、食べさせるのに本当に苦労しました。しまいには怒ってしまって、そのあとで自己嫌悪……の繰り返し。赤ちゃんが食事を食べないからといって怒るなんて、まったく自分に余裕がなかったなと今は反省の気持ちです。
子供たちがよく食べたのが、亀田製菓のベビーせんべい「ハイハイン」でした。カルシウム配合、アレルギー特定原材料等28品目不使用で、国産米100%のおせんべい。これは不思議とよく食べてくれましたね。少し塩味なのがよかったのかもしれません。
私の作った食事より美味しかったのだとは思いたくはないのですが、人それぞれ、食べやすいものってあるんですよね……。それに食事としてではなく、「おやつ」としてだから食べられたのではないかなとも思っています。椅子にじっと座らされて「これちゃんと全部食べなさい」と強制されるより、散歩の途中にだとか、食べたい時に食べる方が、楽しく、美味しかったに違いありません。
また、近年はご年配の方の食が細くなり、一日に必要な量がとれない栄養不足が深刻な問題となっています。食卓で「ちゃんと食べて」と心配する家族に言われるのも、赤ちゃんと同じようにプレッシャーになってしまうもの。テレビで大好きなお相撲を見ながら、お茶を飲んでおしゃべりしながらであれば、おじいちゃんもおばあちゃんもおやつの方が食が進むのではと思います。
できれば、テーブルの上には市販のおせんべいやお饅頭ではなく、自然な甘さの蒸しパンやお団子、季節の野菜や果物などを用意して、その時に必要な栄養のあるおやつを口にしてもらいたいですね。そうすれば、知らず知らずのうちに元気に過ごせるようになるはず。おやつのパワーをもっと活用しましょう。
谷口ももよの“一日一薬膳”
2023.11.21(火)
文=大滝美恵子
写真提供=谷口ももよ
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