この記事の連載

 7日間で薬膳の基礎を学ぶ、短期集中連載「谷口ももよの“一日一薬膳”」。

 年齢を重ねると起こる、さまざまな身体の変化と上手に向き合っていくためにも、自分の身体と対話しながら、ゆるく薬膳をはじめませんか? 薬膳知識のはじめの一歩を、薬膳料理研究家・谷口ももよ先生に教わりました。


女性にこそ食べてもらいたい山芋

 山芋は腎臓によいとされる食材です。男性の滋養強壮に効くイメージを持っている人もいるかもしれませんが、女性にこそ、口にしてほしい食材なのです。

 山芋は別名「山薬」という生薬です。生薬とは、自然界に存在する動植物をそのまま用いる薬のこと。蒸して乾燥させて使うのですが、山芋が薬だなんて驚きませんか? 疲れや食欲不振、下痢、頻尿、血と水分の不足による発熱の際に用いられ、また更年期障害の症状の改善、ご年配の方のエネルギーチャージにも効果が期待できます。そう、ちょっと疲れたなと思ったら、お値段の張る鰻ではなく、近所のスーパーで手頃な値段の山芋を買ってきて食べればいいんです。私も最近、疲れることが多くなったので、うちの冷蔵庫には必ず山芋が入っていますよ。

「老けたくなかったら腎を補いなさい」

 腎臓は身体を正常な状態に保つ働きをします。生命の源であり、成長、発育に大きく関係しているといわれ、この働きが弱まると老化が早まると考えられています。つまり足腰の弱り、抜け毛、白髪、耳が遠くなる、物覚えが悪くなる……、これらさまざまな老化の現象はすべて腎臓の衰えが大きな原因のひとつなんですね。

 「老けたくなかったら、『腎』(薬膳では泌尿器・生殖器・腎臓などの機能をこう言い表します)を補いなさい」と私はお教室の生徒さんたちに口を酸っぱくして言います。そう、老化と向き合う女性こそ、「腎」を大切にしなくちゃいけません。だからこその山芋なのです。

 また腎臓はホルモンバランスにも関係し、女性の子宮まわりの不調に影響を及ぼします。更年期障害による生理不順に悩んでいた同年代の知人に山芋を食べるようにアドバイスしたところ、生理が再び定期的に来るようになり、身体の不調も少なくなったと喜んでいました。

2023.11.16(木)
文=大滝美恵子
写真提供=谷口ももよ