音楽一家に生まれ、自らも10代から歌手として活動してきた坂本美雨さんは、コロナ禍のある日、娘さんが聴いている音楽に心奪われた。
そこから始まったBTS沼の日々。一番の喜びは、SNSで呟かれるファンの“ぷるぷるした魂”に触れることで……。つらい日々を支えた推し活についての坂本美雨さんと脳科学者の中野信子さんの対談を、『週刊文春WOMAN2023秋号』から一部抜粋の上、紹介します。
スーパースターを親に持っても、アイドルで人生が変わる
坂本 今日は8歳の娘がなぜか私にだけ反抗することについて、ご相談しようと思ったのですが……。
中野 それはお母さんに甘えているんですね。以上です(笑)。
坂本 早っ(笑)。そうですよね。娘は中間反抗期真っ只中なわけだから、私もそんなに問題だとは思っていません。信子さんに何でも相談できるというチャンスをいただいたのに、実は、そもそも私には相談するような悩みごとがないような気がします。
それは、私に起きたあるできごとをきっかけに視野がぐんと広がって、人生に何も無駄なことはないと考えられるようになったからです。何が起きたのかというと、コロナ禍に「BTS」沼にハマりまして(笑)。
中野 大変興味深いです。坂本龍一さんと矢野顕子さんという、それぞれに熱狂的な信奉者がいるスーパースターを親に持つ美雨さんをして、人生の考え方を変えたと言わしめる。恐るべしBTSですね。「BTS」と言った途端に美雨さんは目の色が変わりました(笑)。
坂本 キラーンと輝いたでしょう。一気に細胞が活性化する感じがして、体温がパッと上がるんです。よく胸が熱くなるというけど、私は肩甲骨の辺りが熱くなります。
中野 いわゆる褐色脂肪細胞組織の周辺ですかね。本当に体温が上がっているかも。
坂本 アイドルに夢中になるなんて、人生初ですよ。子どもの頃から好きだったのは、アイドルではなくゴシック系。9歳からアメリカで暮らしたんですが、私の初恋はイギリスのバンド「ジャパン」のデヴィッド・シルヴィアンというボーカリストでした。すごく美しくメイクした人なんです。
2023.10.08(日)
取材・構成=小峰敦子
写真=志水隆