BTSの人気は物理的にファンが作ったもの。アーミーたちが発見して、ラジオでオンエアするためにリクエストをしたり、賞レースで投票したり、そういう組織立った押し上げ作戦がありました。お金、時間、労力を注いでみんなで押し上げたんです。

 小さい頃からこの業界を見てきて、アーティストというのはファンと切り離せないし、相互依存なところもあるということは私もよく承知しているんですが、ここまで一体化した、相思相愛のアーティストとファンというのは初めて見ました。

中野 あるアーティストを応援したいと思って、ファンの集団に入ろうとするときに、ややハードルの高さを感じることがあります。暗黙のコードがあって、これはやってはいけないとか、これを知らないとみんなに迷惑をかけてしまうとか、まずそういうことを知ってからでないと踏み出しにくいと感じることがあります。その辺りのことは、どうやってクリアしているのでしょうか。

坂本 個人的には、先輩アーミーたちへの恐れよりリスペクトの気持ちが大きいです。BTSを知っていくと、ファンダムがすごいということにまず、びっくりすると思います。BTSを好きになると、ファンダムも一緒に好きにならざるを得ない構造になっているんですね。

 たとえば、昨年10月に釜山で無料コンサートがありました。これはメンバーのJINが兵役で入隊する直前に行われた、7人揃ったBTSはこの日を最後に2025年まで見られなくなるという、大きな節目のイベントでした。ちなみに、私にとっては幸運にも初めてBTSを生で見ることができたコンサートです。

 

SUGAの活動を追いかけることが、私の「喪の仕事」だった

中野 お父様とはBTSの話をしたことがあるんですか。

坂本 SUGAさんが子どもの頃に『戦場のメリークリスマス』や『ラストエンペラー』を観て以来、お父さんの曲が好きなんだよ、とか数年前からレクチャーを何回かしました。昨年、父を訪ねてくださって、2人で共作もして、『Snooze』という曲が、父が亡くなった直後に発表されました。彼が坂本龍一の魂を継いでいってくれるような気がします。

2023.10.08(日)
取材・構成=小峰敦子
写真=志水隆