シェフ セルジオ・ハーマンの特別なテイスティングへ

 そんなエキサイティングな未来を予感させる「ル・プリスティン東京」のオープンに先立ち、去る8月、セルジオ・ハーマン氏が来日。記者発表会とテイスティングの会が催された。場所は、桜田通りを挟んだ反対側にある、同じハイアット系列のホテル「アンダーズ東京」。

 記者発表会では、ホテルの概要から、ハーマン氏のプロフィール、「ル・プリスティン東京」のコンセプトを紹介。どっしりと落ち着いたトーンで話すハーマン氏は今をときめく実業家のオーラをまとっていたが、もしかすると頭の半分くらいは、すぐあとの試食会のことを気にしていたのかも知れない。

 優れた経営者であり、数々の有名デザイナー、DJ、アーティストとのコラボレーションでも知られるハーマン氏だが、“フード・ファースト”という軸は決してブレない。そして、料理が気になるのは、私たちとて同じだ。

 ここからは記者発表の内容も散りばめながら、試食会の様子をご紹介していこう。案内された部屋は、キッチンのある小規模なホール。ハーマン氏自ら、ライブキッチンスタイルで料理を作り、作りたての味をカジュアルに楽しんでもらおうというわけだ。

 「ル・プリスティン東京」では、シェフの故郷であるオランダ・ゼーラント地方と、日本の旬の食材を融合させたコンテンポラリーなヨーロッパ料理を提供。メニューの6割はベルギー・アントワープにある本店で提供しているもの、そして3割以上が、日本の食材やフレーバーを融合させた味覚になるとのこと。

 海水と淡水が混じりあうゼーラント沿岸で獲れるウナギ、オイスター、ムール貝は、日本のものとはまた違った味わいがあるそうで、その美味しさをぜひ知ってほしいという思いもあるようだ。

 オランダ南西部に位置するゼーラント地方は、海といくつかの大河に囲まれたエリアで、南はベルギーに接している。主要産業は海産物の養殖や農業、観光業で、ムール貝の一大産地としても有名だ。この地で生まれ育ったハーマン氏は、いまも「最大のインスピレーションの源はゼーラントにある」と言ってはばからない。

2023.09.12(火)
文=伊藤由起