ということは合戦とは広義では戦争と同じであると解釈してもよいものと思う。従って本書では合戦の類に入るものもその範疇ととらえて日本国内の歴史の中から武士集団の争いや紛争、合戦などに関わる発酵食品の存在についても述べることとした。

発酵で有益な物質をつくり出す

 次に「発酵」とは何かについても説明しておく。

 目に見えない微生物の働きを応用して、人類は「発酵」という一大文化を創造してきた。それができた背景には、微生物の性質を知り抜いた知恵の集積があったからにほかならない。先人たちのたゆまぬ観察と豊かな発想から生まれた、この知恵の巧みさときたら、われわれ現代人の想像を遥かに超えるものがある。とにかく、発酵の世界は知れば知るほど素晴らしく、また愉しい。

『広辞苑』によると、「発酵」とは、「(1)一般に、酵母・細菌などの微生物が、有機化合物を分解してアルコール・有機酸・炭酸ガスなどを生じる過程。本態は酵素反応。酒・醬油・味噌、さらにビタミン・抗生物質などはこの作用を利用して製造する。狭義には、糖質が微生物によって酸素の関与なしに分解する現象を、また広義には、これと化学的に同じ反応過程である生体の代謝(解糖系など)、および微生物による物質生産を指す」とある。これはかなり専門的な説明で、一般の人にはなかなか理解しにくいであろう。また次のように記した書物もある。

「有機物が微生物の作用によって分解的に転化する現象。狭義には糖質が微生物によって無酸素的に分解することをいう。この現象は古くからアルコール飲料・パンその他のいわゆる醸造製品の製造に利用されてきた」(『岩波 生物学辞典』)。こちらも、やはり全体に難しいことが書いてあるが、ただ最後の「この現象は古くからアルコール飲料・パンその他のいわゆる醸造製品の製造に利用されてきた」というあたりになると、少々思いあたることがあるかもしれない。つまり、「微生物の作用による現象が、醸造製品の製造に利用できること」ということなら、味噌や酒、醬油、納豆、チーズなどの例が頭に浮かび、何となく「発酵」のイメージがつかめてくるからだ。

2023.09.06(水)