さて「戦争」を『広辞苑』(岩波書店)で引くと「(1)たたかい。いくさ。合戦。(2)武力による国家間の闘争」とある。また『大百科事典』(平凡社)にはさらに詳しく、次のような解説が述べられている。「戦争とはある政治目的のために政治、経済、思想、軍事的な力を利用して行われる政治集団間の闘争である。それが組織的な破壊の企てであるかぎり、ひとの死を伴う」とある。
戦争についてはこれまで多くの政治家や戦略家、社会・人文学者たちがその定義を定めてきたが、そこにはなにほどかの真実が語られてはいるものの、同時に戦争の実態を全て汲み尽くすまでには至っていないように思われる。それは戦争があまりにも複雑な人と人、国と国との現象だからで、戦争はいかなる場所、いかなる時代にせよ、その時点の文明や社会の状態により内容が大きく左右されるからであり、従って戦争を一般的に定義したところで、全てを語ったことにはならないのかも知れない。
そこで端的に戦争とは何かを語れば、兵力による国家間の武力闘争あるいは一国内における内戦や反乱である。これを遂行するとなると巨額な戦費を伴い、国民は慢性的な租税の過重負担に陥っていく。その結果、生活にさまざまな制限が加わり、個人の尊厳を著しく蹂躙することにつながるのである。
例えば近代の大戦をみると、陸海空軍等の軍隊のみの武力戦だけでなく、一般国民を広く巻き込む総力戦の様相を呈するものとなっている。そうなると、謀略戦、経済戦、貿易戦、食糧戦、補給戦、精神戦なども包括しながら、社会や経済など幅広い分野に破壊的な影響を与える。そして国民の人的被害やインフラの破壊、経済活動や教育などまで阻害され、社会のあらゆる部分に物的、精神的被害を与えることになるのである。
第一次世界大戦や第二次世界大戦では、戦争はただの武力戦に終らず、国家がその経済力や技術力などの国力を総動員する「国家総力戦体制」となった。そのため全国民がそれに耐えなければならず、国民の生活も苦境に追い込まれていく。
2023.09.06(水)