松也&右近が誘う感無量のラスト
![将軍となった義輝を祝う宴で刀剣男士たちは舞を披露。©NITORO+・EXNOA LLC/TRKPC](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/8/1280wm/img_381ad9cd723028c854611ad8881246cb116270.jpg)
適材適所の配役が実現し稽古を重ねるほどに各キャラは魅力的な造形となっていったようです。歌舞伎や原作ゲームに詳しい人にはなるほど! と思わせる要素を盛り込みながら展開される物語で描かれるのは、義輝を生きながらえさせて戦国時代の到来を遅らせようとする敵と刀剣男士との闘い。
歌舞伎独特のせりふ回しや身体表現を軸としながら、時にワイヤーアクションなども取り入れて舞台はテンポよく進んでいきます。ビジュアルや音楽の美しさも印象的で、刀剣男士全員が顔を揃える場面などは原作ゲームのファンのみならず注目が集まっています。
悪の陰謀によって義輝は次第に暴君と化していき家臣の松永久秀は命を狙われるという物語で、キーマンとなる将軍・義輝を演じているのは右近さんです。莟玉さんは義輝の妹・紅梅姫、鷹之資さんは松永弾正の子である松永久直としても出演しています。
そこには「ひとりの役者が二役を演じるのは歌舞伎ではよくあること。その面白さも楽しんでいただきたい」という松也さんの思いが込められていました。
![尾上松也さん。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/1/6/1280wm/img_168f36cc38f77871ca5f05d75ebaf7b5177752.jpg)
史実で義輝を暗殺したとされる松永久秀は古典歌舞伎『金閣寺』に登場する松永大膳のモデルとなった人物でもあります。ということは『金閣寺』のスピンオフという一面も持ち合わせているのです。その久秀を人間国宝の中村梅玉さんが演じているため作品はアップグレードに成功。『金閣寺』では巨悪として登場する人物がどのように描かれているのか、ベテランの存在感ある演技に注目です。
![左から松永久秀(中村梅玉)、三日月宗近(尾上松也)©NITORO+・EXNOA LLC/TRKPC](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/7/6/1280wm/img_760d511b813798d4ba01adccb780a2ad108193.jpg)
ストーリー展開について「壮絶な最期を遂げた義輝と宗近のクライマックスを想像するところから着想した」と語っている松也さん、それだけに三日月宗近と義輝の関係性の変化は大きなポイントです。三日月宗近と義輝、松也さんと右近さんの間を行き来する無言の交流が何とも切なく、物語を味わい深くしています。
![左から足利義輝(尾上右近)、三日月宗近(尾上松也)©NITORO+・EXNOA LLC/TRKPC](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/b/5/1280wm/img_b58f6da54cae38158456b72fbdf6cebf100120.jpg)
クライマックス直前を盛り上げるのは薩摩琵琶の弾き語りで、凄絶な立廻りの末にやがて訪れるのは感無量の結末……。それをじっくりと味わうかのように客席からは惜しみない拍手が贈られ、終演後には早くもシリーズ化への期待を口にしている人の姿もありました。
![](https://crea.ismcdn.jp/common/images/blank.gif)
2023.07.22(土)
文=清水まり