快活でユーモラス。サービス精神も旺盛だけど、自分をいたずらに飾ることも過剰に謙遜することもないストレートな物言いは、痛快さすら感じさせる。

 近年は数々のバラエティ番組に出演し知られるが、子役時代から歌舞伎の舞台に立ち、達者な芝居で観客を沸かせてきた人。今や歌舞伎座でも主要な役柄を務めるなど、若手ホープのひとりでもある尾上右近さん。

 2022年10月は自身初となるミュージカルに挑戦するなど、歌舞伎にとらわれずに活躍。2022年12月30日(金)~2023年1月1日(日)には詩楽劇「八雲立つ」に出演し、日本古来の狂言や音楽との協演により新たな才能を花開かせる。


時には空気を読まずにハミ出していきたい

――目前に控える詩楽劇「八雲立つ」は、右近さんのほかに、元宝塚男役トップスターの水夏希さん、ヴァイオリニストの川井郁子さん、和楽器奏者の吉井盛悟さんなどが出演し、演出を日本舞踊家の尾上菊之丞さんが手がける。異ジャンルの方々とのコラボレーションが面白い公演ですね。

 そうなんです。これだけ多ジャンルの人たちとぶつかり合うって、これはもう舞台表現の上での総合格闘技だと思うんです。この間までミュージカル(『ジャージー・ボーイズ』)に出させていただいていたり、僕という歌舞伎俳優として単体で、他ジャンルに飛び込んでいく経験はありましたけれど、今回のように多ジャンルに渡った人たちが一堂に会して、新たなジャンルとでもいうような切り口で公演を打つということが初めてなんです。ただ、もともと何でも許容するのが、歌舞伎というジャンルの魅力でもあると僕は思っています。みなさんで一緒にやらせていただくことでどんなものが出来上がるのかはわかりませんが、上質なエンターテインメントを目指して取り組んでいきたいなと思っています。

――日本の神話であるスサノオとイワナガヒメの物語をベースした物語の中で、右近さんはスサノオを演じます。神話の登場人物であるスサノオを、現時点でどのように演じたいと思っていらっしゃいますか。

 男そのものというか、男の憧れみたいな存在じゃないですか? 手に負えない暴れん坊みたいなところもあるけれど、ヒーローでもあって、しかもそれが神様だというところに何か超越した説得力がある。今回の役に関して、まだ詳しい内容は伺っていませんが、演出の尾上菊之丞先生が歌舞伎的な要素を入れようと考えてくださっているようです。いわゆる荒御魂という荒々しい神様なので、その描写を歌舞伎の荒事という…顔に隈取をして、体を躍動させるような表現っていうのを織り交ぜて見せていくことになると思います。これは歌舞伎をやっていてもミュージカルをやっていても思うことですが、自分が何かを表現する上で嬉しい瞬間っていうのは、みんなの呼吸が合った瞬間なんですね。今回もそんな瞬間がきっとたくさんあると思いますが、ぴったり合うだけでなく、時には空気を読まずにハミ出していくような、躍動したスサノオを作っていけたらと思っています。

2022.12.17(土)
文=望月リサ
撮影=平松市聖
スタイリスト=三島和也(tatanca)
ヘアメイク=Storm(Linx)