役者としては新年をお客様と迎えられるのが幸せです

――日本舞踊、宝塚、クラシック音楽、和楽器、それぞれの魅力を、右近さんご自身はどこに感じていらっしゃいますか?

 日本舞踊は、歌舞伎と親戚関係みたいな感覚ではあります。ただ、歌舞伎俳優の踊りというのは、ある意味セッション味が強いというか、その瞬間の役者の衝動的なもので表現していくところがあると思っていて。逆に、自分なりの表現の方程式みたいなものを常に研究して追求してらっしゃるのが日本舞踊家さんの踊りのような気がしています。そこは結構近くて遠い感覚なので、ご一緒させていただくと交流を持った感覚になります。

 和楽器に関しては、歌舞伎とは地続きという感覚です。「琴線に触れる」って言う言葉がありますけれど、日本の楽器の音って、理屈では理解できない、心が震えるというか心が持っていかれるような魅力があって、僕はそれが好きですね。ヴァイオリンの川井さんとは、先日ラジオに呼んでいただいてお話したんですが、静の中に滝のような情熱を秘めている方だなと思いました。クラシックの世界も歌舞伎の世界も、今までの伝統を大事にする気持ちを持ちつつも、このままただ継承するだけじゃ駄目なんじゃないかっていうのはあるんですね。

 私たちが古典として扱っているものも、新鮮な目で見る必要があり、新作に後世に受け継がれ、やがては古典と呼ばれるような素敵なものを作る必要があるんじゃないか。そういう想いを強く持った方だなと思っています。宝塚に関しては、歌舞伎が女を男がやるように、男を女性が演じますよね。ただ宝塚には退団というものがあり、そこは歌舞伎とは違う腹の括り方が必要な場所だと思うんです。だからこその強さとか、特殊な経験値を感じますね。

――演出の尾上菊之丞さんとはこれまでにもお仕事されていますが、どんな演出家さんですか?

 先生は、ステージングに対して本当に細かくおっしゃるので、精密な方っていう印象が強いです。その上で、役者の気持ちが動くことをめちゃめちゃ考えてくれる。スマートで精密な客観性がある一方、温かくて、何か衝動的な情熱を持っている方だなと思っています。

――2022年の締めくくりと23年の始まりを今作で迎えますね。

 僕、べつにお正月に休みたいというタイプではないので、嬉しく思っています。1月3日に開幕する国立劇場での歌舞伎公演にも出させていただくことになってまして……、忙しい人っていう感じがしていいじゃないですか。忙しいってことは、つまり売れているわけで、「今が旬の尾上右近」って、ブランディングとしては最高だなと(笑)。……というのは冗談半分ですけど、新年をお客様と迎えられるというのは、役者にとってすごく幸せなことだと思っています。

2022.12.17(土)
文=望月リサ
撮影=平松市聖
スタイリスト=三島和也(tatanca)
ヘアメイク=Storm(Linx)