歌舞伎以外のお仕事は、留学のような気持ちです

――22年にはミュージカルにも挑戦しています。歌舞伎の枠を超えた世界でのやり甲斐や面白さはどこに感じていらっしゃいますか?

 歌舞伎は型が存在していて、それを自分のものにしていくもの。他の芸能は自分のものを型にしていくもののように感じています。僕の中では、東京から大阪に行くのと、大阪から東京に来るくらいの違いです。歌舞伎はある意味、もう自分の生活の一部みたいになっているもの。それ以外の作品に出ると、自分のコンディションによって、集中力って微妙に違うんだなっていうことに気付かされるんですね。やっぱり作業ではなくお芝居なので、気持ちを注ぎ込む工程が重要なんだということを、外部のお仕事をさせていただくと感じます。

――歌舞伎の外の世界に出ようと思われたのは?

 ミュージカルの世界にはアッキー(中川晃教)さんに誘っていただきました。もともとやってみたいことの中にミュージカルはあったんですよね。あと、歌舞伎のためになるのかなという気持ちもありました。歌舞伎の世界っていうのは、不思議なことに歌舞伎以外のところで何かをやっている人の方が歌舞伎にとって重要、みたいな空気があるのを感じていたんですよね。もちろん人気商売だし、外に呼ばれるっていうことは、それだけ役者としての価値があるっていう考え方もある。それもわかるので、ならば僕もやんなくちゃという気持ちが当初はありました。ただ今は、留学しているような気持ちです。最初の頃の、これをやってみたら何かが起こるかもしれない、という好奇心の時期から、今はもっとちゃんと勉強したいという気持ちでやっています。

――違う視点を手にしたことで、歌舞伎での気づきみたいなことはありますか?

 パフォーマンスの上では変わらない気はします。でも、ずっと一緒にやってきている仲間に対する感謝は、あらためて感じるようになりました。家族ってそうじゃないですか。一緒にいることが当たり前すぎて空気みたいになっちゃっていたのが、一回家を離れて大事さにあらためて気づく、みたいな。

――逆に歌舞伎や清元の素養が、外の世界で生きることはありますか?

 自分がやってきたことですし大事にしたいし、発揮したいんですけど、それを武器にしたり強みにしようと意識すると、逆に僕は鼻につく傾向にある気がすると思うので、なるべく作品に寄り添うことを考えています。ただ、歌舞伎らしい表現や、詩楽劇ということで歌もあるでしょうから、バチッとハマればいいなとは思っています。

2022.12.17(土)
文=望月リサ
撮影=平松市聖
スタイリスト=三島和也(tatanca)
ヘアメイク=Storm(Linx)