この記事の連載
- 河野裕さんインタビュー #1
- 河野裕さんインタビュー #2
登場人物それぞれが強烈な愛を抱いている
――小説『愛されてんだと自覚しな』は、キャラクターそれぞれが自分の愛を貫いていて、読後感が爽やか。本当にオールハッピーな小説でした。
河野 ありがとうございます。「ずっとそこにある愛」をメインに据えて、色々な愛のバリエーションを並べていきました。テーマ性は重視せずに書いたと言いましたが、今読み返すと愛についての何かしらのテーマはある気もします。
――最初に思いついたシーンはどこですか?
河野 まずタイトルができて、それと同時にクライマックスのシーンや周りの風景、キャラクターの心情が見えました。そこから、物語が成立するように設定を考えていったんです。
――輪廻転生のルールも、その時に決めたのですか?
河野 ルールは時間をかけて考えましたね。楽しい小説を書こうと温度感は決めたけど、ストーリー的に何かしらの軸を作りたいなと。スタート時点では主人公の岡田杏が「今のままで十分幸せなんだ」とくり返し言っていて、強がりのように聞こえるかもしれません。千年間、何度生まれ変わっても運命の相手とは結ばれないわけですから。でも読み返した時に、「強がりではなく、本当にずっと幸せで、本心からの言葉だったんだな」と愛の強さみたいなものに納得していただけると嬉しいです。
お気に入りのキャラクターは「杏」と「祥子」
――気に入っているキャラクターやシーンを教えてください。
河野 どのキャラクターも気に入っていますが、あえてあげるなら、千年の記憶を持つ主人公・杏と、杏のルームメイトで天才的盗み屋の祥子でしょうか。あまり書いたことのないテイストで王道のキャラクターを書けた気がして、それは良いバランスでしたね。シーンとしては、クライマックスです。気持ちよく出来上がりました。
2023.08.01(火)
文=ゆきどっぐ
撮影=鈴木七絵