いざ入団! プロの世界を実感

―プロのダンサーになったことを実感したこと、入団してから3年経った今、印象に残っていることをお聞かせください。

 試験に合格したことは嬉しかったのですが、入団した直後『ラ・バヤデール』の練習に参加することになり、「このパートをやってください」といわれ、これが本当にプロの世界なんだなと実感しました。

 試験が終わったら終わりなのではなく、1つのことが終わるとそれが新たな始まりでもあるのだと、まるで生まれ変わったかのように事が進んでいくのだと思いました。

 『ラ・バヤデール』では「壺の踊り」のソリストを踊らせていただいたのですが、この役をやらせていただくことができたことに、とてもびっくりしました。というのも、そのソリストと共演する2人の少女の一人をバレエ学校の時に経験したことがあったからで、それがすごく嬉しくて楽しかったです。『白鳥の湖』の4羽の白鳥を踊ることができたのも印象に残っています。

――クララさんがこれから目指すことは?

 ダンサー人生というのは意外と短いので、その限られた時間で、私は今ある全部の作品を踊りたいと思っています。それをすごく楽しみにしています。

 パリ・オペラ座バレエでは1年に1回昇進試験があって、バレエ団が選んだ課題曲と自分が選ぶ自由曲を踊ります。この自由曲で自分に合ったものを選んで、自分を表現することができます。

 試験結果は順位が示されるのですが、それぞれの階級に何枠の空きがあるかが発表され、その枠の数だけ上位から選ばれます。

 私がコリフェ、そしてスジェに昇進したのもこの試験の結果です。公演のための役の稽古をするのはもちろんですが、その傍らで自由曲は1年も2年も前から準備する人もいますし、短期間で臨む人もいます。私はその時にもよりますが、映像で知らない作品を見つけたら、これを踊ってみたいと思って、できるだけ早く準備するようにしています。

――憧れのダンサーがいたら教えてください。

 私は好きなダンサーがたくさんいて、演目にもよりますので、一人に絞ることはできません。もし一人だけいてその人を目指して頑張ったとしても、自分が違った方向に行くこともあるので、できるだけ多くのダンサーを参考するようにしています。最近は知らないダンサーをネット上で見つけることもあって、それが新たなダンサーとの出会いとなっています。

――今回の日本での公演についての思いについてお聞かせください。

 私の母は日本人ですから日本人の遺伝子も半分受け継いでいるので、日本で踊ることがとても嬉しいです。まだ若いのにこういう経験をさせていただく機会をいただけたこともありがたいと思います。

 東京文化会館は幼い頃に一度だけ観に来たことがある場所です。はっきりとは覚えていませんが、今その場所で踊れることを、1つの夢が叶ったように感じています。

 私は和食も好きだし、日本のドラマも大好き。日本って生きている町っていう感じがして、滞在しているときは寝るのも惜しいと思ってしまいます(笑)。久しぶりの日本で「ル・グラン・ガラ」の舞台に立てるのがとても楽しみです。

クララ・ムーセーニュ

2004年フランス・パリ生まれ。13年に9歳でパリ・オペラ座バレエ学校に入学。パリ・オペラ座バレエ学校の創始初の13歳で『ダンス組曲』に主演。14歳で『二羽の鳩』グルリ主演、卒業公演では『コッペリア』のスワニルダを15歳で踊る。20年に16歳でパリ・オペラ座バレエに首席で入団。21年に17歳で「コリフェ」、22年に18歳で「スジェ」に昇進。同年にヌレエフコンクールにて審査員満場一致で1位、ヌレエフ特別賞を受賞し、23年はカルボー賞を受賞。レパートリーには『くるみ割り人形』の金平糖の精、『瀕死の白鳥』『眠れる森の美女』のオーロラ姫など多数。フランス・バレエの伝統を受け継ぐ正当派のダンサーとして期待されている。

「ル・グラン・ガラ2023」

https://le-grand-gala.com/

【東京公演】
日時 2023年7月31日~8月3日
会場 東京文化会館 大ホール
お問い合わせ チケットスペース 03-3234-9999

【名古屋公演】
日時 7月30日(日)13:30開演
会場 愛知県芸術劇場大ホール
お問合せ CBCテレビ事業部 052-241-8118

【大阪公演】
日時 8月5日(土)17:00開演
会場 フェスティバルホール
お問合せ キョードーインフォメーション 0570-200-888

(出演)
〈パリ・オペラ座バレエ エトワール〉
アマンディーヌ・アルビッソン
レオノール・ボラック
マチュー・ガニオ
ドロテ・ジルベール
ユーゴ・マルシャン
リュドミラ・パリエロ
〈パリ・オペラ座バレエ プルミエ・ダンスール〉
オードリック・ベザール
〈パリ・オペラ座バレエ スジェ〉
トマ・ドキール
クララ・ムーセーニュ
ビアンカ・スクダモア
〈パリ・オペラ座バレエ コリフェ〉
ニコラ・ディ・ヴィコ
〈シュツットガルト・バレエ団 プリンシパル〉
フリーデマン・フォーゲル(特別出演)

2023.06.12(月)
文=山下シオン
写真=佐藤亘