注目のドラマ脚本家は“平凡な名前”のパク・ヘヨン
韓ドラは優秀な女性脚本家が多いのも面白い。『還魂』のホン姉妹(ホン・ジョンウン、ホン・ミラン)、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』のムン・ジウォン、『応答せよ』シリーズのイ・ウジョン。僕が夢中になるドラマの脚本家は全部女性。中でも、いまいちばん注目しているのは、『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』や『私の解放日誌』のパク・ヘヨン。群像劇が抜群にうまいし、貧困などの社会問題もすごく上手に表現する。しかも、救いようのない話の中にも笑いの要素をちゃんと入れてくる。センスがいい。
『私の解放日誌』は、ソウル郊外に暮らす3きょうだいが自由と生きがいを求める話で、舞台が中途半端な地方。しかも、会社のあるソウルまで遠いから、イ・ミンギやキム・ジウォン演じるきょうだいたちは通勤電車に乗っている時間が長い。ここまで何も起きない韓ドラはいままでなかった。不治の病で死ぬような展開もなく、リアルな出来事と会話で紡いでいく。パク・ヘヨンの進化を感じるし、シンパシーも抱いた。僕も何も起きない日常を詞に描くほうだから世界観が似てるなって。このドラマで謎の男を演じてブレイクしたソン・ソックも、高倉 健のような存在感があっていい。
先日、パク・ヘヨンで面白い“事件”があったんだ。最近、『ショーウィンドウ:女王の家』というドラマがWOWOWで始まり、脚本クレジットに「パク・ヘヨン」とあったので観てみたら、なんだか調子が違う。おかしいと思って調べてみたら、僕の好きなパク・ヘヨンとは別人。音(カタカナ表記)にすると同じだけど、ハングルや漢字で表記すると違う名前。それって、彼女が以前書いたドラマ『また!?オ・ヘヨン〜僕が愛した未来〜』と同じじゃないか! って。
高校にオ・ヘヨンという名前の女の子が2人、「かわいいオ・ヘヨン」と「ただのオ・ヘヨン」がいて間違えられる話で、おそらくパク・ヘヨン自身の体験から生まれたんだと思う。どこにでもいる平凡な名前だもん。「マツモトタカシ」もそう。日本にいっぱいいる。俳人もいれば議員もいるしヤクザもいるからね(笑)。
2023.05.09(火)
Text=Izumi karashima