基地問題や政治的なテーマは、民放の地上波で正面から扱うことは難しい。そんな中で企画が通りかけていて、沖縄に理解の深い人達が一緒にやりたいと言ってくれている。この機会で書かなければ、もう二度とないだろうと覚悟を決めました。
沖縄には合計で40日ほど滞在し、取材しました。1回につき10日間くらい、朝から晩まで、沖縄在住の一般の方はもちろん、警察関係者、弁護士、女性の性被害者からの相談を受けている団体の方、ブラックミックスの当事者まで、100名以上の方にお話をうかがいました。
残念ながら、米軍への取材はオフレコでも難しく実現しなかったのですが、米軍の捜査機関からは直接話を聞けました。メディアではおそらく日本で初めてではないでしょうか。プロデューサーに組んでもらった取材以外にも、一人で飲み歩いたり、6月23日の沖縄慰霊の日に行って、できるだけ沖縄を肌で感じるよう努めました。
――桜の事件を取材する雑誌記者のキーを演じる主演の松岡茉優は「知らない人には知ってもらう、知ってる人は傷つけない作品を作れたら」と意気込みを明かしている。そして、性暴力被害者の支援団体に力を貸す精神科医の城間薫役を演じるのは、沖縄出身の新垣結衣だ。
総勢50人以上の沖縄出身の役者が出演
脚本を書き始めたときから、キー役は、ぜひ松岡茉優さんにお願いしたいと思っていました。オファーをしたとき、松岡さんはすぐに良いお返事をくださったのですが、偶然にも、琉球大学で女性の貧困や性の問題に取り組んでいる上間陽子さんの著書、『海をあげる』を読んでいたそうなのです。松岡さんとは、昨年の日本アカデミー賞授賞式で初めてお目にかかったのですが、「お話をいただいたときには、来た、と思いました」と、熱意を伝えてくれました。
宮本エリアナさんは、なんと今回が初めてのお芝居で初主演。大きなプレッシャーがあったと思います。でも、脚本をきちんと理解していてセリフ覚えも完璧で、沖縄ことばを指導の方と特訓して、撮影時にはとても上手になっていました。お芝居も、ベテランの松岡さんに引っ張られてすごく良かった。エリアナさん自身、ミス・ユニバース日本代表に選ばれたとき、ブラックミックスであることで心無い言葉を浴びせられたこともあったそうですが、今後もっと活躍の場が広がるといいなと思います。
2023.04.15(土)
文=「週刊文春WOMAN」編集部