思春期にもう一度育てなおすつもりで、親が子どもを受けとめる。親の受けとめる姿勢ができると子どもは本音を表出しはじめる。根深い問題、乳幼児期からの自我発達不全が思春期に露呈することも多い。思春期の脳の発達スパート期に、新しい治療的関係、環境、体験により、今まで生きてきた年月を振り返り、内省し、新しい家族関係、自己発見をしなおす。
3.学校への対応
学校は親とともにその子の日々の様子を把握している。早期より学校とは緊密に連携し、適切な対応をする。
4.投薬
思春期の症状や問題行動では、状態がエスカレートし急性錯乱状態に陥ったり精神病に発展するリスクがある。その場合には、すみやかに対人刺激を取り除き、向精神薬により鎮静をはかる。しかしまず、子どもとよく話しあい、わかりやすく説明し、子どもの気持ちを十分にくんで子どもの不信をあおらぬよう本人の同意を得る。「薬は料理にたとえればあくまでも塩・胡椒のようなもの。でもこの苛立ちと不眠はますます君を苦しめるので使ってみよう。君に役に立つかどうかを君が私たちに教えてほしい」と。
病院や相談機関に行くべきかどうかの判断
さて、ここまで読んできた方には、本だけではどうにもわが子の問題は解決できそうにない、病院にいくしかない、と考える方もいるかと思います。
医療機関の介入なしに親の力で解決できる思春期の問題と、医療機関などに相談した方がよい問題をどう見分ければよいでしょうか?
ひとつの基準は、子ども自身がその行動や症状によってどれくらい困っているかどうかです。
たとえば家庭内暴力も、偶発的に手が出てしまったようなケースは、親が落ちついて様子をみましょう。しつこくからんできたり何度も繰り返しエスカレートする暴力は、相談機関の介入が必要でしょう。
自傷行為などもこの基準でよいでしょう。不登校など「いじめ」が原因とはっきりわかっているケースとそうでないケースがあります。後者は鬱病などがあるといけないので、医療機関を受診したほうがよいということになります。
2023.04.03(月)
文=渡辺 久子(児童精神科医/元慶應義塾大学病院小児科)