それを出川さんやホリケンさんが回答したらどう思われますか? 

「今日、どうした??」と言われてしまうと思うのです。

 自分に見合った言葉があると思うのです。売れている芸人は自分が求められる言葉をチョイスするのが本当に上手いなぁ~と思います。

 自分に合った言葉を見つけることは、お笑い芸人として大事なことだと思います。パンサー・向井は自分の言葉を見つけて才能を開花させた芸人だと思います。向井は幼なじみと共にNSC11期生として入学してきました。コンビ名はあじさい公園。NSCに入る前から地元でお笑い活動をしており、大学在学中にNSCに通っていたと思います。華奢な体と愛らしいルックスで、NSC在学中からファンがついていました。

 NSC在学中にあじさい公園は一度解散し、りゅーじ(現・チャッピー。)を入れてブルースタンダードというトリオとして再始動します。近藤がツッコミ、向井とりゅーじがボケでした。りゅーじはちょっとヤンチャな感じのする九州男児。その横で小柄な向井がボケるとどこかチャラけて見えてしまうのです。ボケるというよりもチョケているという感じなのです。彼らのネタを見て「女性人気は出るだろうけれど、男は笑わないのでは……」と思ったのです。それで向井に「ツッコミになったほうがいいのでは?」と勧めたことがあります。

 ボケとツッコミは表裏一体。明らかなボケ気質、ツッコミ気質な人もいます。しかし、どちらもできる人も多いのです。そういう人はツッコミを入れるところでボケを重ねることもできる。優れた芸人はその腕を見せつけてくれます。

 ブルースタンダードは1年で解散してしまいましたが、向井は菅と尾形と組んでパンサーを結成します。このトリオでは向井がツッコミをやらざるをえません。ツッコミになった向井は秘めていた能力を発揮します。菅と尾形という曲者を巧妙に捌くことで、言語能力を高めたと思うのです。いまやラジオで引っ張りだこの存在。向井は言葉から愛された芸人だと思うのです。

『電波少年』も『ボキャ天』も認めず…「あれはお笑いじゃない」ロンブー、ココリコ世代の“東京吉本芸人”たちのプライド へ続く

2023.03.04(土)
文=山田ナビスコ
出典=「東京芸人水脈史 東京吉本芸人との28年」