自分のことを「ベタ」と認識している芸人はいいと思います。しかし、ただ言葉のチョイスだけをもって「センスいいでしょう?」とドヤ顔してくる芸人を見て「そうじゃねえんだよなぁ……」と思ってしまったのです。
そもそも「銀行強盗」という設定からして昭和じゃないでしょうか? その数年後には重機でATMごと持っていくという強盗事件が多発しました。もはや、現実が想像を超えてねえ?と考えてしまったのです。
これだけスマホが普及した時代に「オマエ、昨日なんで遅刻したんだよ」というネタをやる芸人が今でもいるのです。その後の展開によほどの意外性があるか、ボケに天然で強烈なキャラクターでもない限り見ていられません。
言葉のセンスはもちろんですが、自分としてはネタの設定にセンスのあるほうが魅力あるなぁ~と思うのです。
パンサー・菅が畑中しんじろうとハイアンドローというコンビ時代につくったネタを今でも覚えています。設定は友達の葬式。ふざけ倒す菅。畑中が「いい加減にしろ! 不謹慎だろ」とキレると菅が言い返します。「これは、こいつがオレが死んだらやるって言ってたことをやってんだよ!」復讐をしているのです。自分には考えもつかない発想でした。菅のセンスはずば抜けていたと思います。特技としてアピールしてきたのは「ストⅡのコンボを入力するモノマネ」です。プレステのコントローラーを持ってきてボタンを早押しするだけです。それをモノマネと言ってしまう切り口にセンスを感じました。
どのようなネタを「センスいい」と褒めればいいのか、いまだに迷います。
「言葉」は人を選ぶ
お笑いコーナーの定番「大喜利」は出されたお題に対して、いかなる回答を出して笑いを取るかを競う言葉遊びです。芸人のワードチョイスにセンスが求められます。
しかし、言葉があふれかえっている時代において、言葉も人を選んでいると思うのです。
例えば、大喜利番組で千原兄弟・ジュニアさんや麒麟・川島さんなど大喜利巧者が答えたら爆笑し、「おぉ~!」と唸るような回答があるとします。
2023.03.04(土)
文=山田ナビスコ
出典=「東京芸人水脈史 東京吉本芸人との28年」