音楽を通して、これから目指すものとは?

――次のアルバムのことなどは考えていらっしゃいますか?

 今は空っぽですね(笑)。音楽の作り方にも理系と文系があって、理系的な脳は技術的な蓄積だったり、革新的な手法だったりを使って作ります。今までは音響的な興味で作ったことが多く理系的でしたが、今回はテクニカルなことを気にせずに感情だけをのせたので文系的でした。

 誰も想像していなかった時世だからこそできたことですし、それを僕のフィルターを通して表現しました。だから、今度はもう少し理系的なものになるかもしれませんね。

――自身のアルバム制作は自問自答を繰り返すような日々なのでしょうか?

 本当にそんな感じですね。でも、音楽は自分にとって人とのコミュニケーションが基本です。吹奏楽部のときもそうでしたが、今回もアーティストとのコラボレーションだけではなく、エンジニアの人とか、地元の制作のスタッフとかと、誰かと何かをやることで出てくるものなんです。

 人によっては“音楽=自分だけ”という世界にいる人もいますが、僕はひとりで考えるとどんどん袋小路へと追い込まれます。 コミュニケーションをして相手にぶつけて返ってくるほうが煮詰まることもありませんよね。

――Yaffleさんの煮詰まったときのリラックスの方法は?

 お風呂ですね。自宅もいいですし、寒いところが好きなので温泉とかも行きます。フィジカル面でのリフレッシュもありますけど、メンタル的には過去の自分に固執しないということも結構大事だと思っています。

 煮詰まった時って、6、7割くらいはできていることが多いですが、そこまで作った自分に対して申し訳ないからと思ってしまうと停滞して進みませんが、これはなかったことにして流してしまえば、意外にギリギリでもゼロから創ったほうがいいものができたりします。つまらない映画の元を取ろうと思って最後まで見ても、結局つまらないのと同じですね(笑)。

Yaffle(ヤッフル)

東京都出身。TOKAのプロデューサーとして藤井 風やiri、SIRUP、小袋成彬、Salyu、eill、adieuなどの楽曲をプロデュース。2020年9月には欧州各地のアーティストを迎えた1stアルバム『Lost,Never Gone』をリリースし、2021年10月に発売されたポケモン25周年コンピレーション・アルバムには唯一の日本人アーティストとして参加した。映画音楽の制作も担当しており、2020年にサウンドトラックを手がけた『映画 えんとつ町のプペル』で“アニメ界のアカデミー賞”といわれる第49回アニー賞最優秀音楽賞にノミネートされるなど、幅広く活躍している。

『After the chaos』

CD:UCCD-1898 税込み3,300円 2023年2月17日発売
配信リリース 2月17日 Deutsche Grammophon / Universal Music
https://Yaffle.lnk.to/Afterthechaos

2023.02.21(火)
文=山下シオン
撮影=平松市聖