【14日】
金丸先生(金丸純二さん。近所に住む親戚で、哲代おばあちゃんと同じく元教員)と植えたジャガイモがあんまり大きくなっとらんの。金丸先生がひどう心配しとってんですけど、小さくてもジャガイモはジャガイモ。大丈夫です。何年も畑を作りよるけど、うまくいかん時もあります。我流でございますからよう分かりません。イモも大きゅうなりたい時と、そうでない時があるんでしょう。
「心配かけんようにしたい」書いたノートは5冊も
【17日】
仏壇や棚の引き出しからノートがたくさん出てきました。遺影を撮った頃かなあ、友人や同級生が相次いで亡くなってね。葬式にもようけ行きました。それで、自分の葬儀やお寺さんへの対応のことをよくノートに書くようになりました。毎日調子に乗ってちゃらちゃらしとりますが、夜ひょっとした時に思うんですね。姪たちに心配かけんようにしたいなって。それでその辺にあるノートに書くんでございます。
あちこちに書くもんじゃから何冊にもなってしもうて。え、5冊もありましたか。自分の心配ごとをみんなに投げ出したようですけど、いつか1冊にまとめて姪たちに伝えときたいです。
【22日】
うちの田の米作りは近所の人に任せておるんですが、今年も新米がとれました。やっぱり味が違います。毎回2合炊いて3、4回に分けて食べとります。ありがたいことに食欲が落ちることがないんでございます。体重ですか? ずっと変わらず45キロほどですかな。
「ああ、大好きだったんだなあー」取材記者のまなざし
取材にうかがうたびに伝わってくる。ああ、大好きだったんだなあーと。なぜなら哲代おばあちゃんは毎回、必ず一度はこの人の名前を口にするからだ。2003年に亡くなった夫の良英さん。空をちらっと見上げ、哲代おばあちゃんはその姿に思いをはせる。
「よう頑張っとるなあと、褒めてくれとるでしょうて」
最愛の人に見守られているという絶対的な安心感が、哲代おばあちゃんの日々を支えている。
2023.01.25(水)
文=石井 哲代,中国新聞社