憧れの京都、坂道の東京

 川越 僕は京都に住んだのは大学以降なので、20年が経つのにまだ日常の感がないんです。

 浅田 生まれ育ちが違うと暮らしていてもどこか非日常なものですか。

 川越 はい、大阪育ちなので。

 浅田 近くても大違い、というのが大阪と京都の面白いところですね。

 川越 大阪をほっつき歩いていても五重塔や「坂本龍馬遭難の碑」なんかにはぶつかりませんから。澤田さんはずっと京都ですよね。

 澤田 親は中部の出身なので生粋の京都人というわけではないですが、生まれてこの方、京都住まいです。

 浅田 京都には永遠に憧れを抱いているので、実際に住んでいる人が日常的に神社仏閣に行ったりするものなのかというのは興味があります。

 川越 僕はけっこう行きます。朝早くの大徳寺とか、貸し切り状態なので、これは京都在住でないとなかなか味わえないなと。観光客が激増してからは少し遠ざかっていたのですが。

 澤田 コロナ禍で人出が減ったことで、長らく出かけていなかった龍安寺や建仁寺、平安神宮の庭園などにも行ってみました。

 川越 僕もこの機会に奈良の東大寺まで行きました。大仏と二人っきりで、こんな贅沢でいいのかなと思う程でした。

 浅田 いくつになっても京都の旅では限界まで予定を詰め込んで見て回ってしまうので、住んだらどうなるのかなと思ったんですが、お二人の様子だとやはり地元の方でも名所は見たいものなのですね。ただし、空いていれば(笑)。

 澤田 私は逆に、東京に初めて行った時に、街が平らでないことに衝撃を受けました。

 浅田 面白いな。東京者としては京都に行った時に観光用に貸自転車屋があることに驚くんです。あれは、盆地の中で平面に展(ひろ)がる街ならでは。

 澤田 東京の地名で愛宕山(あたごやま)とか白山(はくさん)とかありますが、まさか本当に山とは思わなくて、白山から東大へ抜けようとして坂道の凄さに絶望したことがあります。

2023.01.23(月)
文=「オール讀物」編集部
写真=石川啓次