川越 僕の場合は、現代に生きている自分自身が物事に流されているというか、もっと我武者羅にならなくていいのかなと悩んだりするので、いっそう歴史に惹かれるのかなと思います。特に中国の歴史を見ると、みんな無茶苦茶な事をしていて、その生命力に憧れる。全力で生きて全力で死ぬ、みたいな。日本の歴史でも同じですね。だから、僕は人間のエネルギーを感じられれば、読むのも書くのも、どの時代であっても興味があります。
澤田 人間の一生って喜怒哀楽の色んな事が起きて、死んでいく。その積み重ねが歴史だと思うと、どこを切り取っても面白い。信長や秀吉だけでなく、無名の人にもドラマがあるし、私はそれを掘り起こしたいんです。
浅田 古代から近代まで作風が幅広いから、調べものも大変でしょう。今は何をお書きですか?
澤田 「オール讀物」では隠元禅師を。本になるのは少し先ですが。
浅田 隠元といい、孫文といい、難しい的(まと)を狙われるから、お二人とも頼もしいですね。こうして話していても、歴史時代小説には無限の可能性があると感じられます。
写真◎石川啓次
(「オール讀物」12月号より)
2023.01.23(月)
文=「オール讀物」編集部
写真=石川啓次