この記事の連載
イスタンブールの新市街、ホテルの選択肢は広い。ホテルでの滞在を目的とするならボスポラス海峡沿いの高級ホテルもいいが、ここまでご紹介したショップやレストランを楽しむなら、地の利の良さも重要。そこで、今回は3つの観光名所に近いホテルとレストランをご紹介しよう。
人気女流作家が小説を書き上げたホテル、かつては宮殿で働く上級管理者の宿舎だった建物を改装したホテル、新市街のランドマークに隣接するホテルと屋上レストラン、そして、ファッション誌の名前がついているレストランを厳選。街歩きも滞在も、ことさら思い出に残る旅にするために。
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人気作家や女優、女性スパイ、大統領夫人も滞在した「ペラパレス・ホテル」
![アールヌーボー様式の建築がライトアップされて、ことさら夜は美しい。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/e/6/1280wm/img_e6ff238d23addb321c758dee1fc674af205331.jpg)
新市街最大の繁華街、タクシム大通りに近い一等地。アールヌーボー様式の建築が美しい「ペラパレス・ホテル」は、パリとコンスタンティノープル(イスタンブール)を結ぶ長距離旅客列車、オリエント急行の乗客を迎えるために建てられたホテルだ。
![回転扉を抜けると、ロビーでは赤いじゅうたんが出迎えてくれる。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/f/d/1280wm/img_fdf026434623f6f2ff64a4fcd5ab293d169712.jpg)
オリエント急行が運行を開始した10年後の1892年に着工され、1895年に最初のゲストを迎えた。列車の東の起点となったイスタンブールには、世界各地から憬れの旅客列車に乗るために多くの著名人が訪れた。彼らを迎えるに足る高級ホテルが「ペラパレス・ホテル」だった。
![今は乗ることができないが、創業当時のエレベーターが改装後も残されている。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/e/3/1280wm/img_e32d48a91055917f291a95263909d388283551.jpg)
滞在した著名人は枚挙にいとまがないが、アルフレッド・ヒッチコック、アーネスト・ヘミングウェイ、マタ・ハリ、グレタ・ガルボ、ジャクリーン・オナシス・ケネディなどは、彼らが滞在した客室が、彼らの名前を冠した客室になっている。世界各地から客室指定で予約が入るのはこのため。
![壁には、ホテルに滞在した著名人の写真が飾られている。誰もが知っている顔がたくさん!](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/1/0/1280wm/img_10dcd4fe48b1a60e47d4ac919ae94650106678.jpg)
なかでも、401号室アガサ・クリスティ・ルームは、女流作家である彼女が、長編推理小説「オリエント急行殺人事件」を書き上げたことで知られている。室内には執筆に使われたタイプライターが残されていて、ファンにはたまらない客室だ。
![101号室アタテュルク・ミュージアム・ルームには、トルコ共和国初代大統領アタテュルク氏が好んで滞在した客室。人形とともにゆかりの品が展示されている。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/6/e/1280wm/img_6e34f589d6dd3e3b230dbe5a850e6c4b138651.jpg)
![101号室のベッドルーム。天井が高く、家具も高級感があって、大統領にふさわしい客室だ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/0/4/1280wm/img_0436870cc183d8426eb2bf48039e220d102698.jpg)
また、101号室アタテュルク・ミュージアム・ルームは、トルコ共和国の初代大統領、アタテュルク氏が滞在した客室。現在は博物館として、アタテュルク氏ゆかりの品々とともに公開されている。
![「アガサ・レストラン」のメインダイニング。市松模様の床は、アールヌーボー様式の特徴だ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/e/9/1280wm/img_e9447e2b42c8ec6943b56687207d7bb6154769.jpg)
![ロビー横のメインバーとは別に、「アガサ・レストラン」にも軽食とドリンクを楽しめる一角がある。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/9/0/1280wm/img_90e34e8219492156b2fad285251abc26150227.jpg)
館内には、夜にはライブ演奏が入るバーラウンジや、テラス、パティスリーがあり、メインレストランは、女流作家の名前が付けられた「アガサ・レストラン」。イスタンブールでも指折りの老舗人気レストランだ。アールヌーボースタイルの市松模様の床が美しい。フレンチ、イタリアン、トルコ料理を楽しむことができる。
![この日のコースのメイン料理はビーフソテー。小さな玉ネギとミニトマトが載っている。付け合わせはセロリ入りポテトクリーム、ほうれん草に似た青菜のソテー。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/4/e/1280wm/img_4ea46db2da0d5193b66a7768b1ec380d96930.jpg)
オスマン帝国時代からトルコ共和国へと時代が移り変わって100年あまり。老朽化したホテルは、2008年から2年の歳月をかけて修復され、創業当時の雰囲気をそのままに、水回りなどが使いやすくなって新装オープン。今回の取材時も満室で客室の撮影ができないという人気ぶりだった。
様々な歴史とストーリーをもつホテルなので、宿泊が叶わなくても、ロビー周りや、レストラン、バーで、滞在した作家の小説や映画、女優、女性スパイに思いを馳せるだけでも十分楽しめる老舗ホテルだ。
Pera Palace Hotel(ペラパレス・ホテル)
所在地 Mesrutiyet Cad. No:52 Tepebasi 34430,Istanbul
電話番号 0212-377-40-00
https://perapalace.com/en
2023.01.15(日)
文・撮影=たかせ藍沙