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 新市街のカラキョイ地区は、新市街の中でも特に多くの人々が行き交うエリア。旧市街とは金角湾に架かるガラタ橋で繋がり、ボスポラス海峡側はカラキョイ・フェリーターミナルがある。内陸側の丘にそびえるガラタ塔は6世紀に造られたビザンチン様式の美しい塔で、新市街のランドマークだ。

 カラキョイ地区の北側、にぎわいから少し外れたボアズケセン通りは、クリエイター達がアトリエ兼ショップを構えていて、イスタンブールの最旬デザインの発信地のひとつ。今回ご紹介する4軒は、それぞれから徒歩5分圏内というロケーションだ。

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テイラーのアトリエで生まれ育った根っからの洋服好き「ウミット・ウナル」

 「ウミット・ウナル・プライベートストア」は、ボアズケセン通りから路地を20メートルほど入った一軒家の1階部分。2015年にオープンした「ウミット・ウナル」のフラッグストアだ。

 この地区で生まれたウミット・ウナルさん。父親はトルコのアナトリア出身のイスラム教徒、母親はアルメニア出身のキリスト教徒で、ふたりともテイラーという環境で育った。子どもの頃の遊び場は、異なる文化がミックスされた実家のアトリエだったのだ。

 その後、イスタンブールで考古学と美術史、美術ファッション教育を学び、独自のファッション感覚を身につけた。創業25年になる現在では、イタリア、ドイツ、ニューヨーク、シカゴなどにも輸出している。

 「ウミット・ウナル」のユニセックスでサステイナブルな服は、すべて手作業で仕上げられている。アナトリアとイスタンブールで着用されていた男性服の古着を、女性でも着ることができるデザインにリメイクしたり、ミスマッチとも思える異素材を組み合わせたり、太い毛糸を使って大胆な刺しゅうを施したり。日本の「ヨウジ・ヤマモト」からも影響を受けたという。

 ともすると奇抜になりそうな素材を、シンプルな色とシルエットで着こなしやすいデザインに仕上げている。ファッションに留まらず、ライフスタイルを提案したいのだという。

 プライベートストアから20メートルほど離れた場所にはアウトレットストアもある。ここでは、サイズが限られていたり、シーズン遅れだったりする服やショール、小物を、定価より安く購入できるので、両方のストアを見てから購入を決めることをお勧めしたい。

Ümit Ünal Private House(ウミット・ウナル・プライベート・ストア)

所在地 Tomtom Kaptan Sok. No:8, 34433, Istanbul
https://www.umitunal.com/

2022.11.12(土)
文・写真=たかせ藍沙