普通は小説を書きたいと思っても何から始めていいかわからないじゃないですか。でも僕の場合、読んでくれる芸人仲間がすぐそばにいました。しかもその仲間には本好きも多いですし、オチが大事で起承転結にこだわる職業やったからこそ、より高いレベルでいろんな意見をもらえたなって。そこは大きかったと思います。

――BKBさんは単独ライブで長尺のコントを作っていたりもされていますよね。日頃から物語を考える習慣もあった。

BKB それは絶対にありますね。あと、カッコつけることを意識してました。「芸人がこんなん書いて……」って言われる可能性もありましたけど、クサい台詞くらいのほうが小説っぽいじゃないですか。やから、最初は今まで読んできたような小説っぽい言い回しを真似してみたりして。例えば「目覚めると、そこにはめいっぱい黒が広がっていた」とか。これ、暗い部屋のことを言うてるだけですけど(笑)、言い回しを少し変える練習をやってましたね。

 

吉本ばななを「ばな姉」と呼ぶBKBの正体

――しかも、驚いたのが単行本の帯を吉本ばななさんが書いていらっしゃるという……。元からお知り合いだったんですか?

BKB そうです。ばな姉は……。

――え、ばな姉……?

BKB あ、すみません、そう呼ばせていただいていて(笑)。2018年くらいに、女ゆきえっていう後輩の芸人と「ルミネtheよしもと」の単独ライブに観に来てくれたのが最初ですね。ばななさん、尼神インターの渚とかとも仲いいですし、女性芸人たちとは何回もご飯に行ってるみたいです。で、毎年ばななさんとばななさんの友達、ゆきえと4人くらいで、単独ライブを観に来るんですよ。その終わりで挨拶に来てくれたときに、連絡先を交換したんやと思います。

 最初はBKBっていうネタが好きで観に来てくれてたんでしょうけど、そこから毎年観ることでひとりコントも面白いって思ってくれるようになって。今年も観に来てくれたんですけど、「今まででいちばんよかったね。コントと芝居の間くらいの、ちょうどいいネタの感覚を掴んできたんじゃない?」みたいなことを言ってくれました。

2022.12.30(金)
文=高本亜紀
撮影=平松市聖