「ベンツ(B) からの(K) バイク(B)。B・K・B、ヒィーア!」
テレビでこう叫ぶバンダナにサングラス、赤いラグランTシャツ姿の小柄な男に覚えがある人も多いはずだ。彼はピン芸人・バイク川崎バイク。省略するとバイク川崎バイクのイニシャル“BKB”になる言葉をちりばめたネタや、バイクにかけたフレーズを披露して「バイクだけにブンブン!」とオトしたりする“バイク漫談”が得意だ。
オープンマインドでキャッチーなネタ、そして明るくてポップな芸風。「クラスのお調子者」といった雰囲気だが、実は彼の才能はそれだけではない。
2020年、コロナ禍での緊急事態宣言の自粛生活中、彼はバイクにちなんで毎日、投稿プラットフォーム「note」に8時19分にショートショートを更新していた。そして、それをまとめた小説集『BKBショートショート小説集 電話をしてるふり』が書籍化され、3万部を売り上げたのだ。しかも書籍の帯には超大物作家・吉本ばなな氏のコメントが……。
実は、バイク川崎バイクは芸人仲間からは“友達多い芸人”としても知られている。芸人仲間はもちろんのこと、ミュージシャン、スポーツ選手など幅広いジャンルの人たちと交流があるという。さぞギラギラした“コミュ強”だろうと予想したが、会ってみるとネタの印象とは違い穏やかで優し気。
バイク川崎バイクは、一体何者なのだろうか――。
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「原作、バイク川崎バイク? これがいちばん奇妙やん」
――今夏放送された『世にも奇妙な物語 '22夏の特別編』で、小説集の表題作『電話をしてるふり』がドラマ化されました。
BKB 嬉しかったですね。本が出て2年経って、話題として落ち着いてきた頃にドラマ化されたことで、僕がショートショートを書いていたことを知ってくれる人がまた増えたんです。あと、エンドロールに僕の名前を見つけて、違和感を覚えた人が多かったんでしょうね。Twitterのトレンドに「バイク川崎バイク」が入っていて。「原作、バイク川崎バイク? これがいちばん奇妙やん」って書かれていました。
2022.12.30(金)
文=高本亜紀
撮影=平松市聖