——母音を強調した歌いまわしに、達郎さんからの影響を感じたりするんですが。
山下「それは、それこそ『硝子の少年』の前、『Kissからはじまるミステリー』から僕が書いてるわけですから。最初が『Kissミス』で、次が『硝子の少年』。2人とも音楽的なポテンシャル、好奇心があの当時から強かったし」
歌謡に限らない、音作りの鉄則
——達郎さんもそう感じていらした。
山下「感じてました。剛くんは最初から歌がうまかったし。一方、光一くんは光一くんで、声量的には剛くんに引けを取らないんです。ジャニーさん直系のパフォーマー体質なだけあって、努力家だしね。2人ともよく通る声なんですよ。光一くんも時間さえかけてやれば大丈夫なので、歌入れには僕も全部つきあいました。剛くんが1時間で終わるところが、光一くんは2時間かかる。けど、そうやって丁寧に仕上げていけば、差は埋まっていくんです」
——手のかけがいがある。
山下「そこを面倒くさがって、たいていの人が安直に“はいオッケー!”と言ってしまう。言われる側は不安になるし、相手を信用しなくなるんです。それはもうアイドル歌謡に限らず音作りの鉄則で、作り手の側からも肉薄していかなくちゃいけない。言ってみれば“疑似親子”のようなもので、そばについている大人としての責任でもある」
「ヤなヤツ~!」竹内まりや&山下達郎夫妻 第一印象は最悪だった“サイン帳事件”と、「何かが起きた」スタジオの夜 へ続く
2022.11.20(日)
文=真保 みゆき