——「バカヤロー!」の制作現場も、ご覧になっていた。
山下「見てました。その経験もあって、いかに歌唱力の弱点を補正するかは作家の仕事なんだと考えて、『ハイティーン・ブギ』を作る前に歌いぐせをデータ化したんです。音程の移り変わりで、どこが一番安定しているか、どこが弱いかの表を作った。マッチの場合、音階が下降する時には音程も比較的安定しているんだけど、逆に上昇する音程はとても脆弱で。『ハイティーン・ブギ』の音階が下って下って下りまくるのには、そういった理由があったんです」
「硝子の少年」はリリース当初はボロカスに言われた
——非常に数学的に作られた曲だったんですね。
山下「筒美さんとタメを張りたい。ただその一点ですよね(笑)。と言っても、そういうのを何曲も作れるわけじゃない。なので、タメもヘッタクレもないんですけど。作曲担当として、かろうじて責任は果たせたというところかな」
——一方、KinKi Kidsに提供された「硝子の少年」は、アイドルらしからぬメランコリックな曲調からして、発表当時鮮烈な印象でした。
山下「まさにそのせいで、リリース当初はボロカスに言われたんですよね。“アイドルの曲なのに暗すぎる”って。キンキの2人も不安そうな顔をしていたので、“大丈夫。これは君たちが40歳になっても歌っていける曲だから”と励ましました。そんな彼らも今や40過ぎ。僕の言葉通りになりましたよね」
音楽的なポテンシャル、好奇心は当時から強かった
——以前剛さんに取材した時、近いことをおっしゃっていました。ここからはあくまで想像ですが、剛さんの歌いまわし自体、多かれ少なかれ達郎さんに影響されている部分があるのじゃないかと。
山下「それはどうでしょう。彼等はふたりとも、最初から特徴のある声と歌いぐせがあったから。まあ、“最初に見たのを親だと思う”で、シンパシーという点で言えば、確かに僕に対する親近感は持ってもらえてると思います」
2022.11.20(日)
文=真保 みゆき