歌謡曲の作曲はいまだに小僧っ子

——“座付き作者”とおっしゃいましたが、ジャニーズ・アイドルにも数多く作品提供されています。KinKi Kidsの「硝子の少年」であったり、あとは何といっても近藤真彦さんに書いた「ハイティーン・ブギ」であったり。

山下「歌謡曲の作曲ということで言ったら、僕なんか、いまだに小僧っ子ですけどね。『ハイティーン・ブギ』にしたって、筒美京平さんだったらどういう風に書くだろうって、その一点で考えてますから。『硝子の少年』もしかりで、そういう意味では筒美さんの生徒みたいなもので。

 筒美さんがマッチ(近藤真彦)の曲を仕上げていく現場は、かなり見学させていただいてるんです。当時所属していたRCAのディレクターの小杉理宇造さんは僕の担当だったけど、同時にマッチも担当していたので。小杉さんはマッチのレコーディングのプロデューサーで、『スニーカーぶる~す』の演奏を切り張りして、筒美さんが当初書いた曲の進行を変えたと聞いた時には驚きました。温厚な筒美さんもさすがに不満をもらして。今ならエディットという分野の話ですけど、当時はあり得なかった。しかも筒美さんの曲ですよ(笑)。でも、小杉さんは『すいません、先生。けど元のままじゃ、オリコン初登場1位を取れないんで』って」

『ハイティーン・ブギ』の音階が下りまくる理由

——すごい逸話ですね。

山下「当時のアイドル歌謡には、そういう名物ディレクターがいたんですよね。小杉さんしかり、山口百恵を手掛けた酒井政利さんしかり。

 痛感したのは、アイドルというのは歌唱力うんぬん以前に、どれだけの“切迫感”を歌に込められるか、その一点にかかっているということなんです。マッチだったら『ブルージーンズ メモリー』で“バカヤロー!”と絶叫するくだりとか」

——たしかに、歌のうまさでどうこうできる次元ではないですね。

山下「ティーンエイジ・ミュージックなので、歌うのが男の子だったら女の子の気持ち、女の子だったら男の子の感情をどうつかむかが、一番の問題になってくる。マッチの作品はそういう意味で一番すごかった」

2022.11.20(日)
文=真保 みゆき