日本のいい男市場、生産&供給率ナンバーワンの芸能事務所といえばジャニーズ。いい男が集まる事務所には、心温まるいい話があるもの。年に150本のステージを観ることもある生粋のジャニヲタで、ジャニーズを知らない人にその人の好みに合うグループを紹介する“ジャニーズソムリエ”を自称するライターが、“ジャニヲタの敵”とされる出版社で、ジャニーズ愛を叫ぶ。

KinKi Kidsはジャニーズの最高傑作

●KinKi Kidsのコンサートはここを見て!
演奏、舞台装置、ライティングなど、最良の状態で歌を聴かせるための最高の技術が集結。MCは長いが、他グループのようなショー的要素はなく、あくまで一流のコンサートといった趣。奇跡のデュオがもたらす耳福と眼福。それはまるで“ポップス音楽の美術館”。

 よく、“天才とバカは紙一重”などと言われるが、ヘタウマを味に変えることの得意なジャニタレの中でも、“天才”としか言いようがない才能が、ときどき混ざる。堂本剛がまさにそれだ。

 若くして音楽の冠番組を持ち、吉田拓郎からギターを教わり、今では全曲自作曲でファンクミュージック中心のソロライヴを頻繁に行う。ギターだけでなくベースもピアノも弾けて、ドラムも叩ける。歌の上手さにも定評がある。でも、もし剛がソロで音楽のキャリアをスタートさせていたら、ここまで自由に才能を開花させることはできなかっただろう。

 剛がヒゲや髪を伸ばし、アイドルらしからぬ突飛なファッションに走ったとき、“事務所の偉い人”に呼び出され、2時間説教されたという逸話があるが、“相方”光一は、事務所の優等生。オリジナルミュージカルの脚本、演出、楽曲制作に関わり、帝劇の記録を次々に塗り替えているスーパー王子だ。でも、光一が、「ジャニーさんに褒められたことはない」と語る一方で、剛は「ジャニーさんには褒められたことしかない」と証言する。

 そんなある意味正反対の2人が、ステージで同じ曲を歌い踊るとき、耳に目に、美しいハーモニーが飛び込んでくるのだから、BL好きでなくても、彼らの深いところでの繫がりを妄想せずにはいられない。仲良しアピはしない2人だが、ことライヴになると、音楽で繫がっている感じがヒシヒシと伝わり、その愛情の表れ方は恐ろしく静謐かつ美しい。アイドルに不可欠な妖しさと危うさを、絶妙のバランスでキープし続けるKinKiは、ラブソングのヒット数から言っても、間違いなくジャニーズの最高傑作。世界広しと言えど、ジャニーズからしか生まれない耽美な世界観なのである。

他では読めないジャニーズのいい話

2016.08.31(水)
Text=Guriko Kurabe
Illustrations=Keita Mizutani

CREA 2016年9月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

いい男がいっぱいだと幸せ。

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