この記事の連載
パンデミックという大禍を経ても、フランスは底力を見せつけ、さらに輝きを増している。2024年のオリンピックを目前にパリでは、たゆたうセーヌ川、時を刻む美しい街並みをステージに、世界中の人々を待ち受けている。
フランスの美食家ブリア・サヴァランが19世紀の名著『美味礼讃』の中で記したアフォリズムが思い起こされる。
美食を思う存分楽しめる、おすすめのホテルを9回に渡りご紹介。
ロワール渓谷に咲く麗しき美食の花
◆Fleur de Loire(フルール・ドゥ・ロワール)
![6月にオープンしたばかりの“ロワールの花”。正面の庭では植栽が進んでいる。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/d/b/1280wm/img_db70e871da3e5157330ba3a269f9a05e162665.jpg)
フルール・ドゥ・ロワール。つまり“ロワールの花”という名の美食ホテルが2022年6月、ロワール渓谷の主要都市のひとつ、ブロワに誕生した。
![世界遺産・ブロワ城と16世紀前半に建造されたフランソワ1世棟。張り出した螺旋階段は、ルネッサンス様式の傑作と称賛される。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/f/9/1280wm/img_f9661a715eab3ed2f81f5f107c93d355148856.jpg)
ロワール渓谷は、パリ南方の都市オルレアンの東から西方のアンジェ近郊まで、約280キロにわたるロワール川流域にある。
![ロワール川とブロワの街並みを一望できる窓辺。古城が背負う王の歴史に思いを馳せて。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/2/9/1280wm/img_2966b5930a09a0189773cf8d74d743b7175652.jpg)
シャンボール、シュノンソー、アンボワーズ、そしてブロワといった、歴史を彩る多くの名城が河畔に点在し、豊かな自然とともに独特な景観を作り上げている。
2000年にユネスコ世界遺産にも登録されることになった所以だ。
ブロワ城は歴代のフランス王が愛した居城だ。
![フランスを治めた7人の王と10人の王妃が居城としたブロワ城への入り口広場。ここを起点にブロワ城をひと回りすると、街の歴史が見えてくる。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/1/f/1280wm/img_1fffe2958f5403d15490d48b37f93d23173713.jpg)
ホテル“ロワールの花”は、ルイ13世からこの城を譲り受けた弟オルレアン公ガストンが17世紀、市民のために建造した病院だった時代に遡るがゆえ、“ホスピタリティ”こそが信条だ。
![Christophe Hay(クリストフ・エ) 1977年ロワール渓谷ヴァンドーム市生まれ。2014年「メゾン・ダ・コテ」を開店。2019年には2ツ星獲得、2021年『ゴー・エ・ミヨ』最優秀シェフ賞。2022年6月ブロワに移転し、「フルール・ドゥ・ロワール」を開業した。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/a/2/1280wm/img_a250b6869a8a3ae6d3e33249384b3dba176503.jpg)
オーナーシェフはクリストフ・エ氏。フランス料理の巨匠故ポール・ボキューズ氏に愛され、2014年に故郷であるブロワへ戻った。
近隣の町にオープンしたメゾン・ダ・コテでは、豊かな地元食材を強みにした料理を提供し、2019年にミシュラン2ツ星を獲得している。
![川沿いの建物2階にはカジュアルなレストラン「アムール・ブラン」が。テラスから眺めるブロワの夜景が素晴らしい。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/6/0/1280wm/img_60a523a763f173f237da04b477749023110361.jpg)
コロナ禍を経て、志高く、この広大なシャトーホテルへ移転するという挑戦に打って出る。
自家菜園での作物はもちろん、川魚からジビエ、キャビアまで、この地で手に入らないものは何もない。
![オーダーメイドで作らせた花鳥風月の壁紙がシックで印象的。落ち着いた空気を醸し出す。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/4/e/1280wm/img_4eb4da5f21361856a880dfe97df7e806110460.jpg)
料理を通して、一人でも多くの人にロワール渓谷の魅力を知ってもらいたい。食も語り継がれるべき文化であり遺産、そしてホスピタリティなのだ。
![客室にはシャンパーニュとオリジナルのケーキが用意されており、くつろぎのひとときを実感できる。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/0/7/1280wm/img_07cf8ba7fe7f498400879e782a8bee85208702.jpg)
2022.10.19(水)
文=伊藤 文
撮影=吉田タイスケ
CREA 2022 vol.4
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。