この記事の連載
CREA Traveller 2022 vol.4の特集は、「HOTEL 愛しきあの街のホテルへ」。
ふたたび動き出した世界へ旅に出よう。見慣れたあの街もきっと新しい顔で迎えてくれるから。まずはゆっくりと一流のホスピタリティが約束された“ディスティネーションホテル”の旅でリスタート。
CREA Traveller 2022 vol.4
HOTEL 愛しきあの街のホテルへ
特別定価1,400円
CREA WEBでは、CREA Traveller 2022 vol.4のコンテンツの一部を大公開します!
パンデミックという大禍を経ても、フランスは底力を見せつけ、さらに輝きを増している。2024年のオリンピックを目前にパリでは、たゆたうセーヌ川、時を刻む美しい街並みをステージに、世界中の人々を待ち受けている。
フランスの美食家ブリア・サヴァランが19世紀の名著『美味礼讃』の中で記したアフォリズムが思い起こされる。
美食を思う存分楽しめる、おすすめのホテルを9回に渡りご紹介。
現代クリエイターの美学が集結したパリの邸宅ホテル
◆Cheval Blanc Paris(シュバル・ブラン パリ)

パリ最古の橋ポン・ヌフから、壮麗なセーヌ川右岸の建物を眺める。

ここは、創業の1870年から130年余もの間愛されてきた百貨店、旧「ラ・サマリテーヌ」だ。

老朽化のため閉鎖されたが、2001年に傘下に入れたLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)による修復・改装工事を終え、16年もの沈黙を破り昨年、百貨店・オフィス・集合住宅などを兼ねた複合施設として蘇ったのである。

セーヌ川に面する部分は、LVMHが展開するホテル「シュヴァル・ブラン」の5軒目。2021年9月に初の都市型ホテルとして華々しくオープンした。

セーヌ川沿いのエントランスを入ると、巨大なホールのラグジュアリーに圧倒される。

高さ6.9メートルの天井、精巧な格子状に嵌め込まれた美しい大理石の床、長さ6メートル、高さ2.5メートルもあるブルーの絵は、フランスの現代美術を代表する画家ジョルジュ・マチュー氏の作品だ。

すべては、LVMH会長兼CEOのベルナール・アルノー氏の芸術に対する情熱のもと、フランスの建築家エドゥアール・フランソワ氏とアメリカのスーパースター、ピーター・マリノ氏に委ねられた。

前者は1928年にアンリ・ソヴァージュが設計したアール・デコの傑作をリスペクトし、大理石、金箔、鋳鉄などの職人芸を駆使して内装を作り上げ、後者はインテリアのプロデュースを手がけた。

唯一無二の家具やオブジェ、エレメントを選び抜き、目の肥えたコレクターのための“パリの邸宅”を生み出したのである。

集結したアーティストや職人は600人にのぼるというから驚きだ。

2022.10.15(土)
文=伊藤 文
撮影=吉田タイスケ
CREA Traveller 2022 vol.4
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。