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実は、私は心配性だし小心者。情けないくらいダメなんです(笑)

――有休消化すら、しづらいところのある日本は、見習いたいですね。寺島さんには、いくつになっても女性として輝いているフランスの女性のような空気感があり、多くの女性が憧れています。成熟した女性のロールモデルにならなければ、という思いはありますか?

 えー! 全然ないです。自分は情けないくらいダメです。心配性だし小心者だし(笑)。これまでは、そういうことすら人に話せなかったけれど、普通に言えるようになったことは、進歩かも? イメージと中身のギャップが激しい人って疲れません?

――そうですね。でも、表に出られる方は、役の印象でパブリックイメージが作られてしまうなど、素を出しづらいところもあるのかなと思います。

 私も、以前だったら、「映画『あちらにいる鬼』にかけていたので、髪を剃ることは最初から決めていました。それが寺島しのぶだから」なんて言っていたかもしれません(笑)。でも、実際にはギリギリまで剃髪を迷った自分がいました。

 ただ、これまで女優として培ってきたことを振り返ると、髪の毛だけは剃らないというのは筋が通らないだろうと考えました。前は頑張りすぎていたから、そんな迷いすら見せないようにしていたと思います。

まだまだ人生はこれから。更年期をいかに好転させるかですよね

――そうして、素直におっしゃることができるというのも素敵だと思います。

 嘘は必ずあとでバレてしまうし、嘘をつき続けるのは本人が辛くなりますからね。だから、若い人たちも、そのままの自分を出せるようになるといいなあと思いながら見ています。

――12月に50歳になられますが、人生の折り返し地点という感覚はあるのでしょうか?

 折り返し地点とは考えてないです。でも、このあいだ中井貴一さんとお話ししていて、「しのぶちゃん、何歳になった?」と聞かれて年齢を言ったら、貴一さんは61歳なんですって。そして、50歳と60歳では全然違うとおっしゃっていました。50歳になったときに、折り返し地点に来たなと思うけれど、まだ登ろうという気持ちがある。でも60になると突然、段々降りていく感覚がわかる。だから、この10年を大事にしたほうがいいよと言われました。女性は更年期があるので、少し違うかもしれないけれど。更年期をいかに好転させるか、そこですよね!

――将来、10年後や20年後はこうありたい、というイメージはありますか?

 ないですね。そもそも生きているかわからないですし。

――1日1日その日を楽しく過ごしたいと?

 あわよくば楽しく、かな。楽しむ余裕がまだないですけれど。

――いま、何をしているときが一番楽しいですか?

 犬と寄り添っているときですね。犬は従順だし裏切らない。息子とは違いますね(笑)。

 眞秀もどんどんひとりの人間になってきて、一緒にお芝居を観に行って、突飛な意見や感想を聞けるのは楽しいです。芝居に興味が出てきていることは確かなようなので、それは嬉しいですね。

2022.10.08(土)
文=黒瀬朋子
写真=伊藤彰紀