執筆活動は「部活をずっとやっている感覚」

 くどうさんは、中学生で俳句を始め、高校1年生から短歌とエッセイ、2年生からは小説や児童文学や脚本も書くようになった。岩手は高校文芸の盛んなエリアで、中でも彼女が通っていた高校の文芸部は全国コンクールなどで入賞経験もある強豪校。仲間と切磋琢磨していた。その感覚は今も続いているという。

「そもそも高校文芸にはジャンルが7つあり、みんな当たり前にいくつものジャンルで書く。なので私も自分がマルチだとは一切思っていなくて、部活をずっとやってる感覚です。その分、書くときにスイッチを入れ替えてるつもりもないというか。ただ、何かが起きたときそれを書くのにふさわしいサイズがあるとは思っています。単純に言えば、物語的な出来事ならエッセイだろうし、短く切り取った方がカッコよく決まると感じた瞬間はやっぱり俳句か短歌が向いてるなとか。どの表現に落とし込むのがいちばんいいかは考えますね」

 もっとも、書く上でのコンプレックスもあった。

「ブログをずっと書いていたんですね。誰か読んでくれる人がいると、毎日書ける。なのに、自分だけが見る日記とかノートだと続かないんです。周りの部員は、友達やお母さんとかに絶対読まれたくないと言っていたんですが、私はもう書いてたものを片っ端から親に見せたり、友達にもどんどん読んでほしかった。高校時代から、私は誰かに読んでもらうために書くんだな、読んでもらえる文章を書くのが好きなんだなと思っていました。私の場合は俳句も、自分の生活のことを読むことが多い。自分のことを書くのは、一番コンスタントにやっていたことです。反面、『誰にも読まれなくて全然構わない。自分の納得のいく表現ができるようになりたい』という同級生を、あのころはすごくうらやんでいましたね。同級生の文芸との向き合い方に対して、他人の評価よりも自分を信じて書いている彼女たちの方が本質的だ、文学やる人のあるべき姿なのだろうなと思っていましたから」

2022.10.04(火)
文=三浦天紗子
写真=平松市聖