文楽と歌舞伎のセッション。舞踊劇『色彩間苅豆 かさね』

 そしてもう一つ。身体性という点においてまた違った角度から新たな発見ができそうな興味深いコラボレーションがあります。それは前回のインタビューにご登場くださった尾上右近さんの自主公演「第六回 研の會」で上演される舞踊劇『色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ) かさね』です。

 物語の主人公である腰元かさねとその恋人である与右衛門、そのどちらも演じてみたいという右近さんの願いから実現した企画で、右近さんは主役カップルをダブルキャストで勤めることに。

 その右近さんのお相手役はなんと! 文楽人形。文楽人形遣いの吉田簔紫郎さんが男女それぞれの人形を遣い、共演することとなったのです。

 ともに江戸時代に生まれた伝統芸能である文楽と歌舞伎は、お互いに影響を受けながら今日まで発展してきました。文楽のルーツである人形浄瑠璃から取り入れられた作品が歌舞伎には多々あり、今も同じ演目が文楽と歌舞伎それぞれで上演されています。そして文楽には文楽の、歌舞伎には歌舞伎の味わいがあるのです。

 これはそうした伝統を踏まえ、お互いに敬意を表しながら実現したセッション。生身の人間である右近さんと簔紫郎さんに命を吹き込まれた文楽人形、二つの生命体は2022年の今、舞台上の同じ空間でどのように響きあうのでしょうか。しかも演奏されるのは文楽で演奏される義太夫節とは、邦楽のジャンルが異なる清元。音楽的な意味においても実は斬新なことなのです。

 人間対人間とはまた違った空間で味わう歌舞伎公演。舞踊的な動きや立廻りにおけるアクションはもちろん、ちょっとした目線やしぐさ、衣裳の扱いなどにも注目の上、鑑賞されてみてはいかがでしょうか。

尾上右近 自主公演 第六回「研の會」

2022年8月22日(月)・ 23日(火) 全4公演
演目:「色彩間苅豆 ~ かさね」(8月22日 昼の部、 8月23日 夜の部/かさね、 8月22日 夜の部、 8月23日 昼の部/与右衛門)・「源平布引滝 実盛物語」
国立劇場小劇場にて上演予定。
https://www.onoeukon.info/2022/06/28/尾上右近自主公演-第六回『研の會』開催決定!/