【KEY WORD:在韓米軍】
韓国に駐在しているアメリカ軍の総称。1950年、朝鮮戦争の際に国連軍主力部隊として派遣され、1953年に韓国の兵力増強を目的とした韓米相互防衛条約によって戦後も駐留することに。米軍再編により段階的に兵力が削減されていたが、韓国政府からの申し出により2015年末以降に撤退する可能性も。
在韓米軍撤退には、韓国も日本もちょっと困ってしまいそう……
日本と中国、韓国のあいだで今までにないほどに緊張が高まり、今や東アジアは「次の火薬庫になるか」とまで言われています。その中で、日中韓と北朝鮮の四国間バランスを崩す引き金になるのではと見られているのが、在韓米軍の撤退問題。
アメリカは一九五〇年代の朝鮮戦争の時から韓国に軍隊を駐留させています。このころから韓国軍は米軍の傘下に入って、米軍司令部が韓国軍も在韓米軍も指揮をとってきました。同じ米軍の駐留がありながら、自衛隊の統制権を持っている日本とはそこが違うわけですね。
しかし二〇〇六年、「自主国防」を掲げた盧武鉉大統領がアメリカに軍隊の統制権を返還するよう要求。財政事情が厳しい上、世界に展開している強大な軍隊をもっと効果的に再編成しなければと考えていたアメリカ政府はこれを受け入れ、二〇一五年末に韓国軍の統制権は韓国政府に返還されることになりました。
これをきっかけに在韓米軍も徐々に撤退していくのではないかとも言われています。そうなると、今まで軍隊全体をコントロールした経験のない韓国軍人が果たしてちゃんと指揮できるのかという問題が浮上し、韓国の内部でも揺れているようです。
統制権返還を延期してほしいという声も高まっていて、アメリカに延期を提案したとも報道されています。
日本や北朝鮮との緊張から中国との関係を強めている韓国を、アメリカが突き放したらどうなるでしょう。
歴史を振り返ってみれば、近代以前、朝鮮半島は中国から強い影響を受けてきました。今のような状況が続けば、昔のように中国に傾斜していく可能性もあります。これまでは在韓米軍や在日米軍の兵力を中心として、アメリカと日本、韓国の同盟軍が東アジアで中国や北朝鮮と向き合っていましたが、この勢力図は大きく変わってしまうかもしれません。
現在の力関係が変わってしまうのは、日本にとってはあまりメリットがないでしょうし、危険が高まる結果になりそうです。
2013.09.28(土)