「都市の表情」をモチーフにしたデザインが話題!

 台北市の西側、淡水河のほとりに位置する迪化街。ここは乾物や生薬を扱う問屋街として知られていますが、布産業も盛んだった歴史を持ち、巨大な建物が目を引く「永樂市場」には、今も無数の布問屋が集まっています。その向かいの路地にあるのがテキスタイルブランドの「減簡手制」です。

 「40年ほど前までは、この通りも全て布問屋でした。夜遅くまで出荷作業で賑わっていたそうですよ」と語るのは、創業者兼デザイナーである陳子瑜さん。数年前にここへ移転し、古民家の一階にアトリエ兼ショップを構えています。

 「減簡手制」の特色は、「都市の表情」からインスピレーションを得て、それを幾何学模様や線を組み合わせて表現していること。近代的な家並みではなく、昔ながらの町に残るちょっぴり変わった建築や風景がモチーフになっています。

 例えば「鐵皮屋」という名の柄は、トタン屋根の小屋をモチーフにしたものです。現在は違法建築とされていますが、かつては古いアパートの屋上にトタン屋根の建物を増築する様子がよく見られました。今でも上空から眺めると、赤や青、緑のトタン屋根が並ぶ光景が目に入ります。「台湾の人の中にはこれを醜いと言う人もいますが、自分はこれこそが台湾らしい風景だと思っているんです」と陳さん。

 そのほか、ベランダが不規則に突き出ている違法建築や、古いアパートの壁に塗られた防水ペンキの模様、台北市に隣接する新北市三重区の家並みなどを題材にしています。

 陳さんは普段からカメラを片手に歩き回っており、こうした景色を撮り続けているとのこと。「都市開発が進むと、これらの眺めは消えてしまうことでしょう。私はこういった風景を生活の痕跡として記録したいのです」と語っていました。

 デザインを手がける際には、見たものをそのまま表現するのではなく、風景を構成する要素を一度分解し、それらを再構築してから抽象的に表現していくとのこと。公式サイトにはイメージの元となった建物や風景の写真がアップされているので、商品の柄と見比べてみるとおもしろいはずです。実際に台湾を訪れた際には、こうした景色を探してみるのも楽しいかもしれません。

 商品にはバッグやランチョンマット、ペンケース、ハンドタオル、ボックスティッシュのカバーなど、さまざまなグッズが揃っています。いずれもシンプルでぬくもりが感じられるデザインなので、ライフスタイルに取り込みやすいものばかり。公式サイトでは日本からも購入ができるので、じっくりとお気に入りを探してみてはいかがでしょうか。

2022.05.30(月)
文・撮影=片倉真理