パスクアの前には「肉を取り除く」行事も
ちなみに……復活祭の40日前の水曜日から、復活祭の前日までを指す四旬節という期間があり(イタリア語ではクアレージマ:Quaresima)この期間はキリストが断食をしたと言われています(実際には46日間なのですが、キリが良い40日間が通例になっています)。
キリスト教徒はこの期間は肉を食べないとされていますが、その前に「肉をいっぱい食べてお祭り騒ぎしよー!」というのが謝肉祭。「カルネヴァーレ(カーニバル)」といって、“カルネ(肉)”と“レヴァーレ(取り除く)”に由来しています。
肉を食べるのに「肉を取り除く」という名前がついているのがこれまた不思議ですが、「ばいばい、お肉!」と、次の日から肉を断つからだそうです。そしてなんでも楽しむイタリア人らしく、この日は何をしても無礼講!
もちろん、カルネヴァーレにも欠かせないお菓子があって、代表的なのが”おしゃべり”という意味の「キアッケレ」。パスタのような生地を揚げた素朴なお菓子ですが、軽くて止まらないんです。まさにおしゃべりしながら延々と食べてる感じ。
カルネヴァーレが終わってからパスクアまでの時期(=四旬節)にも色々とお菓子が作られます。ちなみにあのマリトッツォも四旬節の代表的なドルチェ。中でも面白いのがフィレンツェとその隣の街だけでしか作られないアルファベットの形をした「クアレジマーリ」。先ほどの四旬節(クアレージマ)に由来しています。
かつては四旬節では動物性の食材は禁じられていたので、バターやラードなどは使わず小麦粉、チョコレート、砂糖などシンプルな材料で作られていたそうです。
ちなみになぜアルファベットの形かというと、福音書に使われているから。
この期間は肉はもちろんのこと、スイーツも食べてはいけないとされていました。でも、この期間にこっそりスイーツを食べたとしても「いやいや、神に敬意をはらい福音書を忘れないために、神の言葉を唱えているんだよ」と言い訳(?)ができるのだそうです。
そこまでしてお菓子を食べようとしたアイデアが面白い。
謝肉祭から復活祭までの話を長々としましたが、イタリアに限らずどの国も行事と食べ物は必ず一体で、行事を行わなければその食べ物もいつかはなくなってしまいます。行事を大切にすることが伝統料理を守ることにも繋がるので、こういった習わしというのは大切にしていくべきですね。
ちなみにパスクアの前後は会社もお店もみんなお休みなので、旅行に行かれる際はこの移動祝日をチェックしてスケジュールを組むことをおすすめします!
ということで、今回は南イタリア・プーリア地方で食べられるパスクアのドルチェ「スカルチェッラ」をご紹介! 由来の「Scarcerare スカルチェラーレ」という言葉は「解き放つ、自由にする」といった意味があります。
ボリュームがあるように見えますが、バターは使わずにレモンの皮まるまる1個分をすり入れるので意外とサッパリとした味わいのお菓子です。
名前のとおり“殻を破って復活”の意味があるので殻付き卵を使うのが本格的ですが、とはいえ殻は食べられないのでむき卵で作ってみてもOKです。
2022.04.16(土)
文・写真=齊藤奈津子