林 象徴天皇制を揺さぶる問題! 御厨先生は、上皇さまの生前退位を考える有識者会議の座長代理を務められました(2016年、「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」)。今後の皇室はどのようになっていくとお考えですか。

 

眞子さまの結婚をきっかけに世論が二分

御厨 会議では、これまで安定した皇位継承についてのみを考えていればよかった。つまり皇族の数が減少していく中でいかに皇統を絶やさず次世代に繋いでいくかということです。しかし、眞子さまの結婚をきっかけに世論がここまで二分され、「天皇家は何のために存在するのか」「現代における象徴天皇制の意味は」といった、かつてはタブー視されていた皇室の本質的議論に国民のほうが先に行き着いた。私は今こそこの議論から逃げてはいけないと思うんです。しかし、事ここに至っても、政府は皇位継承も含めて皇室の問題を深く掘り下げることから逃げており、総裁選という政局を経てすぐに議論が始められるとも思えない。暗澹たる気持ちでいる、ということを最初に申し上げておきます。

林 私はいま上皇后・美智子さまが、一体どんなお気持ちでいらっしゃるのか、それをお聞きしてみたいんです。もしあの方がいらっしゃらなければ、皇室はこれほどまで国民から敬愛されていなかったと思う。それくらい大きな役割を果たされたのに、この数年で皇室がこんなことになってしまって……いま、すごくおつらいのではないかと思うんです。

御厨 おっしゃる通りだと思います。美智子さまは民間の出身として初めて皇室に入られ、どうすれば上皇陛下とともにこの国に幸いをもたらせるのかをずっと考えてこられた。それが退位された途端に眞子さまへのこのバッシングでしょう。私もお気の毒な気がするんです。

林 眞子さまは美智子さまにとって初孫でいらっしゃるし、その成長を心から喜んでおられたでしょう。まさかこんなかたちで皇室から送り出すことになろうとは。

2022.02.15(火)
文=「文藝春秋」編集部