石崎ひゅーいは、ストリーミングやテレビなどをチェックしていなくてもいつの間にか視野に入ってくる。しかも圧倒的な存在感でもって、だ。菅田将暉と密接な共演を続け、映画や演劇やドラマにも俳優として出演。山下智久やナインティナインの矢部浩之に楽曲を提供したかと思えば、菅田のオンラインライヴにも出演。八面六臂の活躍、とはこういうことを言うのだろう。
そんな石崎の通算5枚目のフルアルバム『ダイヤモンド』がリリースされた。映画やアニメの主題歌になった曲を含む、実に濃密な一枚である。それにしても、よくもまあこんなにヴァラエティに富む曲を書いてきたものだ、と感嘆せざるを得ない。
ヴォーカリストとしてストレートに喜怒哀楽を剥き出しにする一方で、ソングライターとしてポップでキャッチーな曲も量産できる。そんな自信と自負と矜持が石崎にあるからこそ、本作はエヴァーグリーンな輝きを放っているのだろう。そう、それこそ、ダイヤモンドのように——。
人とは密になれなかったけど、音楽とはめちゃくちゃ密になった
――新作、聴かせて頂きました。ヴァラエティに富む曲が並んでいますが、アルバム全体を束ねるようなキーワードって何かありましたか?
アルバム・タイトルの『ダイヤモンド』がキーワードと言えばそうですね。2019年に『ゴールデンエイジ』っていうEPを出したんですけど、その頃から「ダイヤモンド」っていう言葉がスタッフの方からもちょくちょく出ていて。僕も誰かが輝いている瞬間をテーマに曲を書きたいというタイミングだったので、ちょうどいいなと思って、『ダイヤモンド』になりました。
――コロナ禍の影響はありましたか? 時間ができたぶん曲を作りやすい環境ではあったのでしょうか。
そうですね。人とは密になれなかったけど、音楽とはめちゃくちゃ密になったなと思っていて。コロナ禍があって音楽との距離がまたひとつ縮まったなって思いましたね。曲を作りながら、音楽が一生苦楽を共にしていく相手だなということを再確認したり。
あと、『ダイヤモンド』っていうタイトルは音楽と結婚した、みたいなイメージもありましたね。それはEPを出した時期では使えなかった。今だからやっと使えるようになったタイトルでしたね。それ以前はそこまでの自信はなかったんだと思います。
――「虹」は『STAND BY ME ドラえもん 2』という映画の主題歌ですが、作詞・作曲にあたってプレッシャーはありませんでしたか? なんせ、国民的コンテンツじゃないですか、『ドラえもん』って。
「虹」はめちゃくちゃ大変で。菅田君が「僕が歌うから曲を作ってよ」って言ってくれたんですけど、これはものすごい高い壁なのでは? と途中からひしひしと感じて。
あと、僕は失ったものに対しての想いを曲にするのは得意なんですけど、身近にあるものに対する感謝とか日常の悦びを歌にするのって苦手で。シンプルにそういう心情を言葉で届けるのってすごく難しかったです。結局、とにかく何度も書き直しましたね。100パターンぐらい書いたんじゃないかな? まる1年かかりました。
2021.12.22(水)
文=土佐有明
撮影=山元茂樹
スタイリスト=渕上カン
ヘアメイク=原田聖子