24歳で母を亡くしたこと、演劇のこと、シンガーソングライターの自由さ
――2015年に「鹿殺し」という劇団の舞台で主演を務められていますが、これが初めての舞台でしたね。どういうツテでオファーが来たんですか?
取材でずっとお世話になっている丸澤嘉明さんという方が、「鹿殺し」の主宰の丸尾(丸一郎)さんを紹介してくださって。丸尾さんは僕のライヴを見て演劇的だと思ったそうです。だから絶対「鹿殺し」の舞台に合うって言ってくださって、オファーを頂きました。
――ライヴが演劇的っていうのは具体的にどういうところでしょう?
身振りとか佇まいや歌い方、あとはライヴでのパフォーマンスや見せ方ということだと思います。実際やってみたら、舞台はライヴで自分がやっていることの延長線上にあるという感覚でした。あと、幼い頃から唐十郎さんなどのアングラ演劇を観ていたことも関係あるんでしょうね。自分のライヴにもそういう演技の要素があったんだと思います。
――お母様が舞台関係の仕事をされていたんですよね?
舞台美術の仕事をしていました。母からの影響は色々な面でありますね。音楽でいうと母がデヴィッド・ボウイがとにかく大好きで、家でずっとレコードがかかっていたりしました。ボウイの『ジギー・スターダスト』っていうアルバムに入っている「ロックン・ロールの自殺者」っていう曲の歌詞が、家の窓ガラスに彫ってあったりとか(笑)、ちょっと変わった家庭で。
僕、出身が茨城県の水戸っていう所なんですけど、そこに唐組っていう唐十郎さんの劇団がやって来たんです。小学生か中学生ぐらいの時かな。親に連れていかれて、観せられたんです。だから僕の中で演劇って未だに唐組のイメージなんですよ。アングラ演劇がアーティストとしての原風景になっている。
――ちなみに、バンドじゃなくてソロでやっていこうと思ったのは、音楽プロデューサーの須藤晃さんに声をかけられたから?
それもありますね。でも僕、24歳の時に母親を亡くしていて、そのあと母に対しての曲を書くようになったんですよ。それってものすごくパーソナルなことじゃないですか。でも、そういう個人的なことをバンドを背負って歌うのは違和感があって。声をかけてくれた須藤晃さんも、そういう背景があるんだったらソロでやったほうが絶対いいって言ってくれて。
――今、シンガーソングライターとして、バンドが羨ましいところってあります?
バンドはミュージシャンの集合体だから、音の強さでどうしても勝てないと思う時はありますね。特にフェスだとそれが強くなる。あとは、単純にひとりで寂しいっていうのはあって(笑)。音源を作る時の孤独な作業もバンドだと楽しくやれるんでしょうけど。
――逆にシンガーソングライターはフットワークが軽い、というのもありますか?
そうですね。どこにでも気軽に行けるっていうのはありますね。ひとりでさっと動ける。バンドは、足並み揃えないといけないから、そこはすごく大変だとは思いますね。ひとりだと音楽的にもどこに行ってもいいっていうか。そういう自由さはありますね。
石崎ひゅーい(いしざき・ひゅーい)
シンガーソングライター。1984年3月7日生まれ。茨城県出身。本名。デヴィッド・ボウイの息子ゾーイよりもじって名付けられた。中学時代からバンド活動を開始。2012年7月に「第三惑星交響曲」でメジャーデビュー。その後は俳優活動や、俳優・菅田将暉への楽曲提供(「さよならエレジー」、「ラストシーン」)、矢部浩之への楽曲提供(「スタンドバイミー」)など幅広く活動中。
石崎ひゅーい 4thフルアルバム『ダイヤモンド』
2021年12月22日(水)発売
◆収録曲(通常盤)
01. ジャンプ(2019年私立恵比寿中学提供曲セルフカバー)
02. スノーマン
03. Flowers(2020年映画『アンダードッグ』主題歌)
04. Oh My エンジェル!
05. ブラックスター(2021年サッポロ生ビール黒ラベル七夕企画タイアップソング)
06. Namida(2019年『劇場版 誰ガ為のアルケミスト』主題歌)
07. パラサイト
08. パレード(2020年テレビアニメ「歌舞伎町シャーロック」エンディングテーマ)
09. ジュノ
10. アヤメ(2021年テレビ朝日木曜ミステリー「警視庁・捜査一課長」主題歌)
11. スワンソング(2021年11月公開ドキュメンタリー映画『私は白鳥』主題歌)
2021.12.22(水)
文=土佐有明
撮影=山元茂樹
スタイリスト=渕上カン
ヘアメイク=原田聖子